AKマニュアル筋力テストにおける過緊張筋と筋膜短縮の反応を考える。カイロプラクティックジャーナル

  AKマニュアル筋力テストにおける過緊張筋と筋膜短縮の反応を考える。

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Beyond Manipulation <第10回>AKマニュアル筋力テストにおける過緊張筋と筋膜短縮の反応を考える。2014.02.22

カイロジャーナル79号 (2014.2.22発行)より

 

筋は、一定のトーヌス、緊張度を保っている。身体の動きがない状態でも、重力に対して身体の一定の位置を維持するために、ある程度の緊張度を保っている。

過緊張や短縮した筋による身体構造への悪影響は、可動域制限、関節への過剰な圧力、神経、脈管への圧力などが考えられる。これらの影響がない場合、その筋の緊張度は、徒手医学の範囲内では正常な緊張度の範囲内と認識するしかない。これは正常な緊張度を特定する方法がないからである。左右の同筋、周囲の筋と比較して、触診により、より硬いと触知されたとしても身体構造への悪影響がない限り、正常とみなすべきである。このため、硬いと思われた筋でも、可動域、神経、脈管への影響を考慮するべきである。

AKでは、マニュアル筋力テストで、筋の神経機能の状態を評価する。単純なマニュアル筋力テストでは、筋神経の姿勢維持や動きに必要であり、基本的な機能である伸張反射を評価する。これは、緊張度を評価するものではない。硬いと思われる筋、または柔らかいと思われる筋でも正常な伸張反射が起これば、正常な機能とみなされる。

しかし、AKでは、身体の動きを想定して、様々な状態での筋神経の機能の評価を試みている。筋が収縮した直後の筋神経の状態、伸長された直後の筋神経の状態を評価する。筋の伸長直後のマニュアル筋力テストの伸張反射の異常は、筋膜の短縮とされ、筋膜リリースが必要とされている。また、筋の収縮直後に伸張反射の異常が起こる場合、ストレイン-カウンターストレイン、緊張度増加が必要な状態と判断される。身体が動作を起こす場合、姿勢を維持した状態で連続的に様々な動きを行わなければならない。このため、同様の状態での筋機能を評価することは当然であると考えられる。

通常のマニュアル筋力テストに加え、収縮後、さらに伸長後の反応をテストする方法を説明して、その反応の機序を考える。

まず、ストレッチ反応と呼ばれるマニュアル筋力テストの方法について説明する。通常のマニュアル筋力テストで正常な反応を示す筋、さらに、その筋が伸張しないことにより可動域制限を起こす短縮している筋をテストする。ゆっくりとわずかな伸長を加えた直後(ゴルジ腱器官を異常に刺激するような急激な早い伸長ではない)のマニュアル筋力テストの弱化である伸張反射の異常が起こる。通常の筋膜と、筋線維の状態では伸長を加える場合、当然のように単純に伸張反射が起こるだけである。

それでは筋神経は正常な状態、筋膜が短縮した状態ではどうであろうか? 筋膜とは筋線維を包む結合組織である。これは、筋の外周を覆うだけではなく、それぞれの筋線維の間にも存在して、これらをつなぎ合わせている。これは筋紡錘を包む被膜にも当然付着することになる。他の膜と同様、この筋線維の間の筋膜も短縮する可能性がある。筋線維そのものではなく筋膜、結合組織を介して、筋線維の伸び、縮みをモニターするため、筋膜、結合組織の短縮はより敏感に伸張反射を起こすと考えられる。

このため、単純なマニュアル筋力テストでは正常にテストされる。しかし、持続的なストレッチが加わる場合、伸張反射が繰り返し起こり、シナプス疲労、神経伝達物質の一時的な枯渇により、正常な伸張反射が一時的に起こらなくなると考えられる。このため、ゆっくりとわずかな伸長を加えた直後のマニュアル筋力テストでは弱化、伸張反射の障害が起こる。しかし考慮しなければならないことは、筋膜の短縮が重度であり、さらに腱の短縮や硬縮も重度である場合、ゴルジ腱器官の異常による抑制も起こり得ると考えられる。したがって、AKで行われるストレッチ反応は、筋膜の短縮に加え、腱の短縮と硬縮を考慮しなければならないということである。

これを臨床で考えれば、急激な伸長、持続的な伸長でない限り、筋膜や腱の短縮が存在しても、姿勢保持や動きのベースとなる伸張反射の障害を起こし、例えば、構造的な安定性の減少を起こすことはないと考えられる。しかし、筋膜短縮が存在する場合、可動性制限、あるいは可動時の関節への異常な負荷、姿勢異常が起こる可能性がある。

一方、筋の収縮後の弱化では、ストレイン-カウンターストレインを必要とされるが、ストレイン-カウンターストレインの施術を必要とする筋は、筋紡錘のγゲインが起こっているとされている。これは正常な筋紡錘を支配するγ運動ニューロンが興奮しやすくなっているということである。能動的な収縮、上位中枢によるγループを介した筋紡錘の刺激を加えることは、すでに過剰に興奮している筋紡錘をさらに興奮させるため、これも同じようにシナプス疲労が起こる。このため、筋の収縮直後では、正常な伸張反射が行われなくなり弱化が起こると考えられる。一度のマニュアル筋力テストでは、シナプス疲労を起こすまでには至らないと考えられる。

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