《特別編》 筆者・榊原直樹氏インタビューカイロプラクティックジャーナル

  《特別編》 筆者・榊原直樹氏インタビュー

カイロプラクティック、オステオパシー、手技療法の最新情報、セミナー案内、関連書籍・DVDの販売

カイロジャーナル TEL.03-3434-4236 〒105-0013 東京都港区浜松町1-2-13江口ビル別館

スポーツ・カイロプラクティック 《特別編》 筆者・榊原直樹氏インタビュー2017.10.24

「日本スポーツ徒手医学協会」設立

  • 徒手療法家向けに動画提供
  • ミャンマーの子供のために
  • 重要なのは健康寿命の延伸
  • カイロに対する誤解を解きたい

スポーツ・カイロ」今号は休載

熱心な読者の多い「スポーツ・カイロ」の連載ですが、今号はお休みします。代わりに著者の榊原直樹氏にインタビューし、新しく立ち上げた日本スポーツ徒手医学協会のことなどを語っていただきました。

徒手療法家向けに動画提供

日本スポーツ徒手医学協会を立ち上げたそうですね。具体的にどんな活動を行う予定ですか?
まずは、提供できるコンテンツを作成することを考えています。徒手療法家向けに動画による教材を作っていきたいと思っています。例えば、肩の動きを3D動画で見られるようにしたり・・・。「ブレンダー」というよい無料ソフトがあるので、それを使って試作しています。
先生ご自身が製作するのですか?
そうです。CGの専門業者に頼めば、一件で数十万円もかかってしまいますから。ブレンダーなら無料で、しかも使い方もネット上で学べるからお金をかけずに作れますからね。それに、業者はCGの専門家であって医学は素人ですから、自分で作ったほうがよいものが作れます。ただ、超難しい(笑)。1カ月前からいじっていますが、ネット上にはトンボの動画を作るのに10日かかった作成者の弁があったりして、この先たいへんだなーと。
すでにウェブサイトは作成されているんですね(http://jamsm.org/)。これもご自分で?
はい、ウェブサイト作成については、慣れているので問題ありません。サイトを見ていただければ、協会の概要はわかると思います。

協会の活動内容

まず協会理念が掲げられています。「健康的生活の一環として運動の重要性について啓蒙し、世界の人々の健康づくり、さらに健康寿命の延伸に貢献する。

  • ボランティア事業によって積極的な社会貢献を行う
  • スポーツ医療に携わる徒手療法家の育成を行う
  • スポーツ徒手医学の有効性についてエビデンスを構築し社会的認知度を上げる」。
  • 動画の提供も、徒手療法家育成の一環です。

ところで会員制度はあるんですか?
まだアイディアは固まっていません。運営にどの程度お金がかかるかもわかりませんし。例えば、学術大会を実施する場合、講演者を招待するなら、講演料が必要になります。そのようなケースにおいて、会費を充当することになるかもしれません。でも最初はそこまで考えていません。学術大会は、ある程度需要の高まりがあって、運営を手伝える人も出てきたら、時期を見計らって実施できればと思っています。
会費の設定もまだなんですね。
そうです。最初はコンテンツを作って無料で提供し、周知に力を入れます。ウェブサイトから会員登録はできるようにしてあります。
今の情報提供者は自分しかいません。動画コンテンツや、これまでカイロジャーナルに書いてきたような専門記事を月に1、2回程度は更新していくつもりで、それが最低ラインと思っています。だから、積極的に参加したいという人がいたらぜひお願いしたいです。

ミャンマーの子供のために

ボランティア活動

ボランティア活動による社会貢献も掲げていますね。
知り合いの中にミャンマーで出家していた日本人のお坊さんがいるのですが、その方を通じてヤンゴンの郊外にある孤児院とのつながりができました。そこの孤児たちの栄養環境は劣悪です。孤児たちは3歳から16歳の育ち盛りにも関わらず、ご飯に具のほとんど入っていないスープをかけたものを食べています。これを一日に朝と昼の二回だけです。今年11月にもう一人の日本人のカイロプラクターと現地を訪れて、姿勢検査をするつもりです。
その孤児院には700人ほどの子供たちがいます。姿勢検査で実態を把握し、現地スタッフに何か助言できればと思っています。先にもお話したように、子供たちの栄養状態があまりよくないので側弯症の発症率が高いのではないかと思っています。
12月10日には、広告でご案内している報告会があります。
現状を報告する予定です。もし賛同者や行く人が増えれば、対応可能なことも広がります。しかし食べ物や環境で躊躇するのか、今のところほとんどの知り合いは行きたがらないですけどね。
報告会では、数々の世界的なスポーツ大会に出向き、ボランティアでカイロ治療を提供してきた伊佐和敏先生、タイの農村の開発援助に携わってきた僧侶のプラユキ・ナラテボー師にもご講演いただきます。治療家としてのボランティアのあり方を多角的に学べる貴重な機会なので、興味のある方々にぜひご参加いただければと思います。その中から、榊原先生の活動に賛同する治療家が出てくれたら最高ですね。

重要なのは健康寿命の延伸

スポーツカイロについて

スポーツカイロの奉仕活動、つまり競技会への帯同や、大会医療スタッフとしての参加については、今後の予定はありますか。
もし近場の競技会に帯同してほしいなどの依頼があれば、やりますが、自分の活動の中では「おまけ」のような位置づけです。機会があればというぐらいで、積極的にという気持ちはありません。バイオメカニクスの教材提供など、学術的なところでサポートして行きたいと思っています。協会理念にも掲げてありますが、健康寿命の延伸ということに興味を持っています。健康を維持、改善する方法の一つとして運動がありますが、その重要性を訴えていきたいと思っています。
トリノ・オリンピックでは公認カイロプラクターとして活躍されました。そのときの高揚感が忘れられないというようなことは?
高揚感はそれほどありませんでした。結果としてよい経験をさせてもらったというのが正直な感想です。また、カイロプラクティックを受けに来るアスリートの多くは外国人ばかりだったのですが、彼らは基本的にオーバーアクションです。ポジティブな反応はもちろん嬉しかったですが、話半分ですよね(笑)。

協会活動の動機

お話を伺ってきて、新しい協会は、治療家としての榊原先生のビジネス部分を除いたすべての統合、というようにも感じます。今この活動を始めた動機は何でしょうか。
ぼくは今年50歳になったのですが、これから何か新しいことを始めるのはラストチャンスだと思っています。何事も新たなことを始めるのは、エネルギーが必要ですからね。
自分は日々の生活に満足していています。カイロプラクティックについては、今まで与えられてばかりだったので、これからは何か還元していきたいと思っています。カイロプラクティックのお陰で楽しい思いをしてきたから、恩返しをしたい気持ちもあるんです。

カイロプラクティックに対する社会の誤解を解きたい

カイロプラクティックの発展のために還元したいということですね。
カイロプラクティックに対する社会の誤解を解きたい思いもあります。カイロプラクティックを名乗るマジョリティがつくってきた誤解を変えたい。
ぼくは、縁があって博士過程に行ったので、アドバイザーとして大学で研究指導をしている人たちの協力を得ることができます。将来的に学術大会を開催する予定ですが、実際に研究に従事している専門家の方たちによる査読は必須だと思っています。ですから学術大会は必ずしもカイロプラクター主導で行うとは考えていません。大切なのは、医療従事者で研究論文の書き方を熟知している専門家による学術大会にするということです。学術大会を通じて本格的な研究論文に触れたカイロプラクターが触発され研究活動に興味を持ってくれたらと思っています。5年、10年後にはカイロプラクターの研究者が育つかもしれないじゃないですか。今は理学療法士が質の高い論文をどんどん出しています。これはアメリカでも同じ状況です。カイロプラクターによって書かれた研究論文は非常に少ないというのが現状です。将来的に日本人カイロプラクターによるカイロプラクティックのエビデンス構築を目指したいです。
今後の発展が楽しみです。カイロジャーナルとしても応援させていただきたいと思います。本日はありがとうございました。

インタビュアー

櫻井 京D.C.(さくらい・みやこ)
カイロジャーナル編集長
大学卒業後、製薬会社、自然保護団体に勤務。体調不良で近所のカイロプラクティック院に行き、カイロの効果を実感。同時にそのカイロ院の待合で、カイロジャーナルを知る。
カイロジャーナルで仕事をもらいながらカイロの勉強ができないか科学新聞・斉藤さんに相談し、1997年夏のWFC世界大会・東京の取材などをさせてもらう。
1997年9月から2001年4月までカナディアン・メモリアル・カイロプラクティック・カレッジ(CMCC)に留学。留学中も海外ニュースなど、カイロジャーナルの記事を書かせてもらう。卒業までにカナダ免許試験と米国免許試験パート3まで取得。
帰国後、開業、整形外科勤務などをしながらカイロジャーナルの仕事を継続。カイロに出会ってから路線変更等いろいろあっても、カイロジャーナルとは常にともに歩み、現在に至る。
日本のカイロプラクティックのためにやるべきこと、やりたいこと、やれることは、人それぞれ、人の数だけビジョンもありますが、知っておいたら必ず役に立つ、と自分が思うことを、ソウルナイトで若い皆様にお話したいと思います。






お問い合わせ:カイロジャーナル

住所〒105-0013 東京都港区浜松町1-2-13 江口ビル別館6F
TEL03-3434-4236
FAX03-3434-3745
E-mailbook@sci-news.co.jp
facebook公式ページへのリンク

長期連載中の記事

過去の連載記事