JOPA主催セミナー「膜シリーズ」終了「思い出と今後」下村彰慶会長に聞く
今回のテーマは「和」
カイロジャーナル91号(2018.2.26発行)より
日本の理学療法士業界やオステオパシー業界は勿論のこと、徒手医療業界に「筋膜」の学問と治療技術を広めた第一人者は、JOPA会長である下村彰慶氏であることは間違いない。しかし、これまで13年間にわたって教えてこられたJOPAセミナーの主幹である「膜シリーズ」は、今年の春から秋にかけて開催されるセミナーをもって順次すべて終了となると聞き、大変驚いている。その事情を、下村彰慶会長に聞いてみた。
車中で突然ひらめいた
- ――「オステオパシーの世界へ」ならびに「膜の概念・頭蓋と身体のつながりⅠ」からスタートする膜シリーズが今年の秋をもってすべて終了するという連絡を受けて大変驚いているのですが、本当でしょうか…?
- 「はい、本当です。今年の春の世界&膜Ⅰから始まる膜シリーズは、秋をもってすべて終了します。」
- ――しかし、昨年シリーズの変更をされたばかりだったのでは…?
- 「そうですね。確かに変更はしたのですが、自分の中で何か思っていることと違うなぁというのがずっとありまして、毎日考えていたのです。しかし、それが何なのかよくわからないままズルズルと続いていたのですね…(笑)」
- ――ということは、何かのきっかけでそれが何かわかったのですね。
- 「そうなんです。昨年のお盆に実家から神戸に帰ってくる車の中で、それが何なのか私がどうしたいのかがひらめいたのですよ。本当に突然だったのです。」
- ――それは一体…。
- 「簡単に言うと、13年間も大きな改良も加えることなく続いてきたわけですから、多くの受講生に支持されたある意味よく完成されたものであったと思うのです。しかし、13年間本当に何も改良していないのか、というとそうではないのです。」
- ――えっ、そうなんですか。
- 「そらそうですよ(笑)。全くってことはないですよ。
つまり、少しずつ足したり直したりしながら13年もの間積み上げてきたものですから、すごく良くなった反面、初めての人がいきなり学ぼうとした時にハードルが高くなり、難しくなり過ぎているのです。」 - ――なるほど。という事は、簡単な内容にするということですか?
- 「う~ん、それも少し違いますね(笑)。基本的に簡単にして教えるということはある意味ものすごく難しいのですよ。頭が良い人でないと出来ませんので、私には無理です(笑)。」
- ――となると、何をひらめいたのですか?
- 「教え方のスタイルを変える、ということですね…。上手く言えませんが。とにかく受講生にとって学びたい所からスタートできるようにしたのです。そして、そこで頭を打つと何でそうなったのかを考えさせる…という風に。」
興味ある部分から勉強
- ――それって、これまでのセミナーと何が違うのですか?
今話せるところだけでいいのですのでお願いします。 - 「元々、JOPAの『膜シリーズ』は、学校を創らなくても上達するようにシステム化していたものなんです。しかし、やはり受講生のモチベーションを上げることが出来ない。セミナーだけではダメだと感じ始めたことで、JTOCという学校を創ったのですね。そして、JTOCの運営は、良い評判が広まってくれたこともあり、当初より軌道に乗ることが出来ました。そのことは、本当に有難かったのですが、逆にそういうモチベーションの高かった人が、1期生2期生、3期生と回を重ねるごとにセミナーから抜けていったため為、総体的なレベルが下がり、教えるのが大変になってきたのです。」
- ――なるほど…。確かに1~3期生の方を含めると、100名位の方が抜けたことになりますから、結構大きいですよね。教える側にとっては同じ20名を教えるにしても、これまでよりも多くの時間を要するということですかね。
- 「簡単に言うと、そういうことになります。では、どうすれば良いかということを考えていたのですが、受講生の興味のある所から勉強してもらったらよいと思ったのです。興味のある所から始めると、楽しみながら意欲的に勉強してもらえるのではないかと…。」
- ――なるほど。確かにそうですね。確かに自分の興味のあることは頑張ろうとしますからね。
- 「そうですね。それにこの13年間の間に、多くの講師がものすごく伸びてくれました。特に、ここ3~4年間の伸び方は本当にすごかったですね。」
- ――何かあったのですか?
- 「そうですね…。勿論、多くの講師が急激に伸びた理由はありますが、それはともかく関節の技術を多くの講師が教えられる位のレベルに達したのはとても有難いことでした。」
- ――そうですか…。それは良かったですね。
- 「はい。出来ても教え方が上手くない人もいますが、JOPAの講師たちは私なんかより教え方は上手いと思いますよ。第一、私と違ってパソコンを使いこなせますから、プレゼン資料なども上手に作りますよ。」
- ――下村会長は使えないんですか?
- 「はい。まったく使えないので、全て若手の講師やトレーナーに頼んで、私の下書きを元に作ってもらっています(笑)。ですから、本当はここをもう少しこうしたいと思っても、申し訳ないから言えないんですね…(笑)。」
- ――なるほど。下村会長にも弱点はあるのですね。
- 「弱点というより、ただのアホですよ(笑)。」
記憶に残る3つのこと
- ――ところで、新しいセミナーシステムは、いつ公表されるのですか?
- 「今の所、今年の8月頃の予定です。」
- ――ところで、下村会長にとりまして、昨年、2017年はどの様な年でしたか?
- 「記憶に残るだろうな…と思うことが3つありました。
1つはJTOC3期生も定員を満たした事、これで、1~3期生まで全て定員を満たした状態で運営できるという事になりました。
2つ目は、知人であるカナダのフィリップ・ドリュエルが運営するCEOや講師や生徒らが越権行為でケベック州の医師会から訴えられたことです。これは、本当に対岸の火事ではなく、我々も注意しなければいけないと気を引き締められたことです。
フィリップは、「CEOが良い学校だから訴えられた」と言ってはいますが、通常は学校や講師を訴えても生徒まではしません。ここでは聞いていることを全て言えませんが、大きなものが動いていると私は聞いています。3つ目は昨年の7月に、JOPAより『オステオパシック メディスン』を出版出来たことです。」
- ――なるほど。その3つは確かにインパクトがありますね。特にカナダでそのような事があったとは知りませんでした。では、改めて、2018年はどの様な年にしたいと思いますか?
- 「勿論、さらに発展する良い年でありたいと思っています。そのためにも、“和”という事をテーマにした年にしたいと考えています。」
- ――“和”ですか…。下村会長は、戦う星の元に生まれて来られた方だとばかり思っていました。
- 「(笑)。それは講師連中にもよく言われます。正直、最も私の不得意な分野であり私に似合わない語彙かもしれませんね。でも、これをしないと私もJOPAもさらなる発展はないと考えているので、無理をして顔を歪めながらでも“和”を求めますよ(笑)。」
- ――是非頑張ってください(笑)。今日はどうもありがとうございました。
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