カイロプラクティックの現状と制度化活動の意味
カイロプラクティック制度化推進(準備)会議
カイロジャーナル91号(2018.2.26発行)より
Q.なぜ制度化活動をおこなうのか?
カイロプラクティックを取りまく社会状況の変化
私たちは、カイロプラクティックが、医業類似行為の中の無資格の療法に位置付けられていると解釈していた。ところが厚生労働省の説明によると、法規解釈では「医業類似行為」の対象は有資格者に限られていて、無資格者は含まれていないらしい。このような現状の背景には、昭和35年1月27日の最高裁判決が大きく影響しているようだ。
一方、当時の厚生省は「医学的観点から少しでも人体に危害を及ぼすおそれがあれば禁止処罰の対象となる」旨を通知しており、資格制度の無いカイロは、いつでも禁止処罰の対象となる可能性を秘めたまま放置されてきたというのが、正しい理解だと思われる。
今、この状況に変化が生じて始めている。
平成24年8月2日「独立行政法人国民生活センター」によって、特に法的な資格制度のない手技への注意喚起がなされ、平成29年5月26日には、消費者庁から「ニュースリリース」と複数の業界団体宛てに「安全対策(要請)」が発行された。
このまま業界が、有効な安全対策を講じられなければ、カイロは禁止処罰の対象になるかもしれない。当会議は、将来の危機的状況を見越し、日本のカイロを守るための手段として制度活動をおこなっている。
リラクゼーション業と違法の判断
平成25年10月改定の日本標準産業分類において、経済産業省の発案により「リラクゼーション業(手技を用いるもの)」が新設された。
リラクゼーション業の職業範囲は明確ではないが、厚生労働省と経済産業省は平成29年5月30日に、医業と民間事業者の区分を示しており、次の行為は違法と判断されている。
- 無資格者である民間事業者が、傷病や障害を有する者に対して、自ら診断等の医学的判断を行い、運動/栄養指導サービスを提供する場合。
- 無資格者である民間事業者が、傷病や障害を有する者に対して、医師からの運動又は栄養に関する指導・助言の範囲を超えて、医学的判断及び技術を伴う方法により運動/栄養指導サービスを提供する場合。
リラクゼーション業への移行の検討
制度化活動の延長上にて、行政より「無資格の医業類似行為は全てリラクゼーション業へ移行してはどうか」旨の提案を受けたが、医学的根拠に基づき施術をおこなうカイロがリラクゼーション業へ移行した場合、療法としての根底が崩れ、単なる手技行為となってしまう。
日本標準産業分類のリラクゼーション業に、医業類似行為を業とする者がその業務を行う事業所は「医療、福祉」に分類される旨の記載があるように、医学的根拠に基づくカイロがリラクゼーション業へ移行することは適切ではないが、医業類似行為に拘らない者はリラクゼーション業への移行も一つの選択肢であろう。
Q.カイロを守るためには?
医業類似行為としての資格化
日本のカイロを守るためには、医業類似行為であり続けることが重要な意味を持つ。現状で、いつ規制処罰の対象となるかわからない状況で不安要素を排除するためには、制度化を実現することが最良の方法であろう。
制度化の課題と賛同者の集約
カイロの制度化の課題として、
- カイロの定義等が不明確
- カイロとその他を区別できない(業界にも行政にも権限が無い)
- 平成3年医事課長通知に対する反証がなされていない
- 国内での科学的検証がなされていない
- 国の認可を得た教育機関がない
- 業界の意向が統一されていない
- 各団体の基準がバラバラ(数日間~国際基準まで)
- 長期間荒れた状況のため、他の医療関係者から否定的に捉えられている
現実的判断として、当会議は2000人~3000人の賛同者の集約を目指す。
行政からの指導内容
カイロの資格化に関して、これまでの行政からの指導内容をまとめる。
- 資格化は国内事情によって判断するもので国際基準は参考に過ぎない
- 既得権があっても危険なものを認めることはない
- 危険なものだからこそ安全におこなえる者を定義する資格化が必要
- 認められる業務範囲に適応した教育内容にすべき
- 最低限の安全性の確保にて資格化し、それ以上は業界が民間資格を設ければいい
- 最低限の安全性の確保とは、他の医業類似行為の資格が目安になる
- 他の医療団体からの賛同を得るには、他の資格基準とのバランスも重要
- 法制化のためには、業界内で統一された定義や認識が必要
- 法制化のためには、療法としての科学的根拠の証明が必要
当会議は、これらの指導に沿って柔軟に活動を進めることが、制度化への近道と考える。
現実的な資格化基準の検討
国内の現状において、現実的な資格化の基準とは、最低限の安全性が確保できる基準であり、具体的には「3年制の養成教育」になると予測されるが、当会議は、判断を行政に委ねて指導に従う方針とする。
その教育内容は、資格取得後の民間資格(理想は国際基準)に繋がるよう、大学教育(4年制・学士課程)を基本とするが、資格化基準と同様に、現実的で柔軟な判断を優先する。
Q.制度化すると現状はどう変わるのか?
制度化の効果予想
当会議は、予想される危機に際して、日本のカイロを守ることを最優先に考える。それが業界にとって大きな利益となると信じる。
また、現時点での制度化の効果予想を以下に挙げる。
1.カイロが医業類似行為として資格化されることにより、その本来の効果と安全性が社会に定着し、他の手技においても、安全性の低い者の自然淘汰が始まる。そうなると、皆が資格取得を目指すようになり、無資格で医業類似行為に携わる者が激減し、「医業類似行為」と「リラクゼーション業(手技を用いるもの)」の棲み分けが進む。(厚労省と経産省の意向に沿うと予想)
2.資格化に伴って最低限の安全性を確保できない無資格者は、カイロを医業類似行為としておこなうことが「違法=規制対象」となるので、消費者庁の要請である危害防止に直結した安全対策となる。(消費者庁の意向に沿うと予想)
Q.カイロプラクティック制度化推進(準備)会議の主な活動とは?
代表委員による全体会議の定期開催
団体会員から選出された代表委員による全体会議。座長の議事運営にて当会議の方針や活動を決定する。行政の立会いにて意見交換を実施している。
業界自主規制
現実的な業界ルールとして自主規制を設定。より多くの事業者が順守可能な内容にて作成。当会議のホームページ上にて公開し賛同者を募集している。
安全施術講習会
厚生労働大臣認可のふたつの協同組合連合会が連携して主催し、当会議が後援する危害防止のための講習会(全4回構成)。消費者庁の要請に応えるべく、全てのカイロ事業者を対象に継続開催している。
早急におこなうべきこと
我々が早急におこなうべきことを、以下に要約する。
- 医業類似行為を望む国内カイロプラクター2000~3000人の意見を集約する
- カイロに関する明確な定義を共有する
- カイロ療法の科学的根拠を示す
- 国の認可を得た教育機関による専門教育の実施
- 国内で、安全性を確保するために必要な対策の実行
カイロ事業者へのメッセージ
国際的には医療の一部を自負するカイロではあるが、国内の現状では徐々に厳しい状況に陥っている。多くのカイロ事業者に社会状況の変化を知っていただき、一人でも多く、当会議に参加して貰いたい。
【広告】カイロプラクティック制度化推進(準備)会議
- 本会議は、カイロプラクティックの資格制度化を目指し、業界整備に取組んでおります。
- 本会議の活動報告は、登録者・参加者・賛同者リストと共に、行政官庁へ提出しています。
- カイロプラクティックの名称を使用する事業者の皆様、本会議の推進活動にご参加下さい。
カイロプラクティック安全施術講習会
消費者庁消費者安全課長通知による安全対策(要請)に基づく共同学習会
詳細情報は、 http://www.siwjc.net にて公開中
臨床安全に必要な知識と、危険な技術の解説(全4 回)
会員(団体・個人・オブザーバー)募集
本会議では、カイロプラクティックの制度化推進を目的に、厚生労働省・消費者庁の担当官にお立会いいただき、定期的に会議を開催しています。
団体会員・個人会員・オブザーバーを募集しておりますので、本会議への参加を希望される方は、運営事務局までご連絡下さい。
業界自主規制 賛同者募集
本会議では『業界自主規制』への賛同者を募集しています。この自主規制は、業界のより多くの方が現状にて順守いただける内容となっております。賛同者が増えることで業界整備が進みますので、ぜひとも、ご協力ください。
本会議の活動は、http://www.clpc.jp をご覧ください。
この他にも、安全対策・業界整備活動をおこなっています。お問い合わせはメールにて、運営事務局 info@clpc.jp まで。
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