代替療法の世界 第8回「好奇心」

※この記事は2018年10月に、カイロジャーナル紙(休紙)に掲載された記事よりアーカイブされたものです。

シュレットDCへの圧力に岡井DC立つ!

岡井健DCとマーク・シュレットDCの縁は深い。シュレットDCの本やDVDを監訳できるのは岡井DCしかいない。そして2010年には、シュレットDCの代役としてセミナーを行った。なぜ代役として講師を引き受けることになったか? それは、シュレットDCが日本でセミナーを行うことに、国内外からフットレベラー社に圧力がかかり、セミナーが中止に追い込まれそうになったからである。シュレットDCを日本に紹介した岡井DCが、この状況を見るに見かねて「私がやりましょう」と立ち上がったのだ。これによって岡井DCは1年間の会員資格剥奪を言い渡された。だが、1年経っても何の連絡もなく、岡井DCが会員に復帰することはなかった。

 

手の込んだことをするものだ!

随分と手の込んだことをする。よほど素人にカイロプラクティックを教えることが面白くなかったのだろう。もとより、日本には長らく「カイロプラクティック・セミナーの対象者問題」があった。平たく言えば、「DCもしくはそれと同等な者以外の素人に、カイロプラクティックを教えてはいけない」ということだ。ここで言う素人の定義は、日本の医療免許保持者であろうがなかろうが、カイロプラクティックの専門教育を受けていない限り素人ということである。日本の現実を見た場合、それほど目くじらを立てなくても良いのではないかと思うが、関係者はどうにも我慢できなかったのだろう。

 

この流れ、何かと似ている

結果、日本に素人を対象としたセミナーにやって来る外国人DCはいなくなった。WFCの通達に米国のDC達は素直に従ったのだろうか? わざわざ、ペナルティ覚悟で日本くんだりまでやって来ようとは思わなくなったのか? どこかの国が、政治がらみで日本に希少価値のあるレアメタルの輸出を禁じたのと同じだ。必要は発明の母と言う。そのお陰でレアアースのリサイクル技術の向上や新たな輸入ルートを確保できた。同じく、捨てる神あれば拾う神ありで、カイロプラクティックからオステオパシーに移行する流れに乗った者もいた。

 

フロイスも、ザビエルも

関係者は見誤った。我々のDNAには好奇心というものがある。ルイス・フロイス、フランシスコ・ザビエル。彼らの日本人評はこうだ。「かくも日本人というのは、地球が丸いとか、新しい機械とかに興味を持つ」「科学者を日本に派遣して欲しい」などという書簡がある。神様の話を聞くのはほどほどに、日本人は知りたいという欲求が昔から旺盛なのである。

 

好奇心を満たす、欧州、米国から続々と!

教えてくれなきゃ他の人に教えを乞うだけですよ、好奇心を満たすためにはこれがあれば十分だ。今ではたくさんのDOが日本に来る。欧州、米国含めて多くの優秀な先生がやって来る。日本は世界2位の経済大国から3位に順位を下げた。しかし、なんだかんだ言っても日本は金持ちだから、講師料も高いし、飛行機の席も上等だし、観光もつく。来ないわけがないだろう。それに安くはない受講料を自腹で払って来るから真剣に学ぶ。講師たちの生徒に対する評判もすこぶる良い。幸いなことにDOを呼んでいる団体は「素人に教えるな」という決まりを作らなかった。数えきれない位のオステオパシーの団体ができて、それぞれがDOを招く。治療業界全般が下火なのだがオステオパシー業界は頑張っている。そういう意味ではWFCと日本の団体は良いきっかけを作ってくれた。カイロプラクティック業界にとっては悲劇だったが、オステオパシー業界を含む代替療法にとっては喜ばしい事であった。

 

同じ船に乗っているのだから

DCにせよ、ノンDCにせよ、同じ船に乗っているのだから協力し合うのが賢明な策だ。でも現実はそうならなかった。無策は罪が重い。それが治療業界の今につながった。水を空けるとは言うが、この有様は1艇身どころか3艇身は離されているように感じる。最初はカイロプラクティック業界がトップスタートを決めた。競艇では先頭を行くのは有利だ。2番手、3番手の船は、前の船の航跡にプロペラを取られて速度が出なくなるから。しかしターンマークでの舵取りを誤ると転覆や失速により、たちどころに抜かれてしまう。今はオステオパシーが順位を上げた。そしてカイロプラクティックが順位を下げた。リフレクソロジーなどの癒し系にも抜かれてしまった。その証拠に近年のカイロプラクティック学校における生徒数の減少、休校、廃校や専門書籍の売り上げ低下が如実に見られる。出版関係者に話を聞くと、近年での専門書籍の売り上げはリフレクソロジー系の学校がカイロプラクティックの学校を上回るという。

 

各オステオパシー団体が競ってDO招聘

オステオパシーに目を向けると、来年からはKOA(関西オステオパシー協会)が主催して小児バイオダイナミクスのセミナー(講師エリザベス・キャロンDO、クリスティン・ミッチェルDO)が開催されるし、JCO(日本オステオパシー学会)ではエドワード・ゲーリングDOによるカウンターストレイン。AJOA(全日本オステオパシー協会)ではブルーノチクリMD、D.O(講師、ビヘジェイクティ女史)によるリンパセミナー。JOF(日本オステオパシー連合)主催でケニス・J・ロッシングDOによるアーバックルの頭蓋セミナーなど。また他団体もセミナーを開催する。中でも注目は、セラピューティクスが主催するハリー・フリードマンDO、FAAOのクラニアル(頭蓋)である。

 

呉越同舟で好奇心の赴くままに

こうした状況は呉越同舟というのがピタリとはまる。個々人思いはそれぞれであろうが、少なくともセミナーに参加すれば技量は上がる。そういう意味では治療業界ということでひとくくりにすれば、カイロプラクティックにしてもオステオパシーであれ、同じ船に乗っているのである。これは良い環境になったと肯定的にとらえるべきであろう。知的好奇心の赴くままに勉強ができるのだから。


山﨑 徹(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者
 
看護師、柔整師の資格を有する傍ら、カイロプラクティックとの出会いからシオカワでガンステッドを学び、21世紀間際にスタートした科学新聞社主催の「増田ゼミ」 で増田裕氏(D.C.,D.A.C.N.B.)と出会ったことから、以後、氏の追っかけを自任し 神経学、NAETを学ぶ。現在は専らオステオパシーを学び実践しているが、これまでに 身につけた幅広い知識と独特の切り口でファンも多く、カイロ-ジャーナル紙から引き続き連載をお願いしている。

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