代替療法の世界 第11回「三方良し」

このアーカイブは、カイロジャーナル紙(休紙)2018年10月からの記事です。

科学新聞社が、というか同社顧問の斎藤氏が企画・運営しているセミナー・勉強会は、多彩な顔ぶれ、内容で人気が高い。毎月のものでは、榊原DCの「スポーツカイロ」、丸山氏の東京・大阪での「局在神経学」、主催はMPSGだが「モーション・パルペーション」、毎月ではないが、チーム・フルタニの「軸トレ塾」、辻本氏の「基礎講座」、そして東京・大阪で年3回の中川DCの「臨床応用」、スポットで小野氏の「小野塾」、海外から岡井DC、吉田DC、そしてセラピーウェイ主催のDr.ケリー・ダンブロジオ、ざっと書き上げられるだけでも、これだけある。かく言う私、山﨑にも斎藤氏から白羽の矢が立ち、「ケリー・メソッドへの誘い」の一環として、今年は「ポジショナル・リリース・セラピー(PRT)」で名を連ねさせていただいている。

 

素人を玄人にするためのもの

セミナーに対して、一部の関係者は快く思っていない。理由は素人に教えているから。これは教育に携わる人が、自分のところはちゃんとした教育をしているという自負の表れであろう。がしかし、教育とは素人を玄人にするためのものではないのか? であるならば、セミナーも教育の一環を担っているのではないだろうか? そもそも日本の医療者を養成する機関では、資格試験のための教育が主であり、実践的な教育はほとんどなされていない。取り敢えず資格を取ったら、あとは実践で力をつけていくしかないのが現状である。

 

資格は取ったが

特に治療というカテゴリーで括っても同じことで、柔整にしろ、鍼灸にしろ、学校を卒業しただけでは、とても食える技術は身についていないのである。資格は取ったが何もできない現状がある。そこで何とかしなければと思う人たちがセミナーの門を叩くのであろう。現状を打破する可能性がセミナーにはある。確かにセミナーは、どれもこれも魅力的に映る。ましてやセミナー初心者であれば、どのセミナーに出ることが自分のスキルを上げてくれるのか? 自分に合ったセミナーは? などと迷うことが多かろう。

 

希少性を上げるには

経済学の基本は希少性である。ここ言葉だけだとわかりにくいと思うが、人はレアなものを求めるということだ。金(ゴールド)に代表される貴金属を欲しがるのも、その表れであるし、治療技術の高いところに患者が集まるのもそういうことだ。治療家という商品を価値あるものに変えるのは、そこに希少性を乗せれば良い。希少性はその人にしかできないことと言い換えることもできる。他の人ができないことをするには、実力をつけるしかない。手っ取り早いのはセミナーに参加することだ。科学新聞社に限らず、他団体もセミナーを開催しているので、それらに出てみるのも良いだろう。リーズナブルという条件で云えば科学新聞社のセミナーはお勧めである。適正な金額であり、それに見合った内容であるから。

 

三河商人の金言「三方良し」

「売り手良し、買い手良し、世間良し」、これは三河商人の言葉「三方良し」であるが、難しい経済学用語を使わなくても端的に商売の基本理念が述べられている。良いセミナーの条件は、売り手、買い手、世間に利益が出る。詳しく述べると、売り手である科学新聞社にも利益が出る。売り手に利益が出ることは重要である。売り手はセミナーの主催者であるから、そこに利益が出ないとセミナーを継続して提供できない。買い手であるセミナー受講生も技量を上げることで希少性を高めることができる。世間である社会に良い治療家を輩出することで患者さんの利益につながる。立派な社会貢献である。無論、売り手は高く売りたいし、買い手は安く買いたい。その金銭的な折り合いで価格が決まる。双方にとって利益が生まれる価格がセミナー料金になる。浜松町のセミナールームだと多くても定員16人くらいであるから、必然的に少人数制のセミナーになる。金額が適正で少人数制のセミナーは魅力的である。講師の目も行き届くし、学ぶ側も十分な教育が受けられる。1人の講師だと生徒の数はせいぜい20人までだろう。それ以上だとセミナーではなくて、ただの講演会になる。

 

笑い者になるのが一番の恥

素人に教えるな、という批判の前に「三方良し」に思いを馳せた方が建設的だ。江戸時代に借金をするとき「もし返せなかったら、どうぞお笑いになって結構です」と言って借りたそうだ。笑い者になることが一番の恥ずべき行為とされていた。そうした恥の文化が日本の文化である。それに照らし合わせてみたら自ずと、自分のやっていることが正しいことか、そうでないかはわかる。教育という商品を売るのであれば、今一度「三方良し」を意識することが必要だろう。そうすることで笑い者にならないで済む。いくら良い教育を提供していると胸を張ったところで、「三方良し」の一つでも崩れているならば、世間から笑われているのと同じである。


山﨑 徹(やまさき・とおる)

はやま接骨院(高知県高岡郡)院長
・看護師
・柔道整復師
全日本オステオパシー協会(AJOA)京都支部長
シオカワスクールオブ・カイロプラクティック ガンステッド学部卒NAET公認施術者
 
看護師、柔整師の資格を有する傍ら、カイロプラクティックとの出会いからシオカワでガンステッドを学び、21世紀間際にスタートした科学新聞社主催の「増田ゼミ」 で増田裕氏(D.C.,D.A.C.N.B.)と出会ったことから、以後、氏の追っかけを自任し 神経学、NAETを学ぶ。現在は専らオステオパシーを学び実践しているが、これまでに 身につけた幅広い知識と独特の切り口でファンも多く、カイロ-ジャーナル紙から引き続き連載をお願いしている。

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