《第2回》カイロプラクティック学校新卒者の日米での違いカイロプラクティックジャーナル

  《第2回》カイロプラクティック学校新卒者の日米での違い

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岡井健DCのI Love Chiropractic ! 《第2回》カイロプラクティック学校新卒者の日米での違い2005.11.03

3ヶ月で結果求める米国悠長な日本は変革必要
カイロジャーナル54号(2005.11.3発行)より

日本とアメリカのカイロプラクティック業界にはいろいろな違いがあるが、新卒者の先生を迎える環境にも大きな違いがある。アメリカでは学校を卒業しても、国家試験と州ごとの法律に関する試験をパスしなければ、ドクターの名称を公に名乗ったり、名刺などの印刷物に学位を使ったりすることはできない。テストに合格して初めて、晴れて患者の診療が許されるわけだ。

そこで新卒者がどのような道を歩み始めるかというと、大多数はアソシエイト・ドクターとして、どこかのクリニックで月給プラス歩合、または完全歩合制などで雇ってもらうことになる。少数派としては、そのまま学校に教職員やアシスタントとして残る者、自分のクリニックをすぐに開業する者がいる。悲しいことに、せっかく卒業したのにカイロプラクターとして職に就くことなく、辞めていく者もごく稀にだがいる。

大多数の卒業生がアソシエイト・ドクターとして、1〜3年ほど他のドクターのクリニックで勤務した後に独立開業するのが一般的であろう。新卒者はなるべく自分の理想とするクリニックやテクニックを頭において、自分に適したドクターを探し、自分の開業に向けて診療や保険請求、クリニック運営のノウハウを身に付けるべく、そこで働くのである。

雇用する立場のドクターは、自分では診きれない患者を担当してもらったり、その新しいドクターが新たにクリニックに患者を増やし、収入を上げてくれることを期待して雇うわけである。私の知り合いのドクターは、最低でも10人ぐらいの新卒者を面接して、自分のクリニックに利益をもたらしてくれる優秀なドクターを採用している。

そして、3カ月以内に一定の収益を上げることができなければ、すぐに解雇する。技術や知識はあって当然で、アジャストできない者など門前払いになる。学生時代にしっかりと完成されていない者に、一から教育をするほど暇ではないのである。どんなに技術や知識があっても、ビジネス面で頑張れない者もやがてクリニックのお荷物となる。

つまり、3カ月である程度の結果を出せなければ、将来的にも望みは薄いということなのだ。非常に合理的でいいと私は思う。冷たいかもしれないが、無能な人間ややる気のない人間と一蓮托生する筋合いはないし馬鹿げている。そのために優秀な人材を正当な条件で雇うのである。

私も最初にアソシエイト・ドクターとして働き始め、一生懸命クリニックの繁栄のために、そして自分の診療技術を磨くために頑張った。その結果、普通のサラリーマンでは手にできない報酬を手にしていた。雇う方も雇われる方もシビアで真剣だから、うまくチームワークができるのである。

日本のカイロプラクティック学校を卒業したばかりの方々と話す機会があって、卒業後の就職状況を調査してみた。それによると卒業生20名中で即開業した者は0名。カイロプラクティックの治療院に正社員として採用された者が1名。パートで採用された者が2名。その他は無償で治療院で働いている者が8名で、残りはカイロプラクティックとは別の仕事で生計を立てながら、友人などを無料で治療しカイロプラクティックの治療技術を磨き、いつの日か開業することを目指しているという状態である。卒業後、すぐに開業できるのは実家が裕福な者がほとんどになる。これが業界の現実だそうだ。学校で教える先生たちの多くも、低賃金で働く理由に、自分の治療院でタダで使える働き手をいつでも調達できるメリットがあるからだという。

アメリカではまず信じられない話である。アメリカでもインターン制度と言って、学生が卒業前に経験を積んだり、単位の足しにしたりするために無料で開業医の下で働くことはあるが、学校を卒業した者が長期間無料で働くことは考えられない。

日本には時代遅れの徒弟制度が存在し、教えてやるんだからタダで働いて当然、という雇用主のおごった考えと、学校で努力しなくても治療院に入って実践で教えてもらえばいい、という新卒者の甘えの構造を垣間見ることができる。日本の業界はずっとこうやってきたのだから、これでいいんだなどと言わずに、雇用主は優秀な者を正当な条件で雇用し、自分の治療院をさらに良いものにしていくビジョンを持ち、学生は卒業時に多くのクリニックから望まれるような、しっかりとした実力を身に付けていてほしい。そうすれば日本のカイロプラクティック業界も、より大きく発展するはずだと私は思うのである。

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