《第16回》学ぶ力、育つ力カイロプラクティックジャーナル

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岡井健DCのI Love Chiropractic ! 《第16回》学ぶ力、育つ力2010.06.24

成長するもしないも全部自分次第
カイロジャーナル68号(2010.6.24発行)より

皆さんの夏はどのような夏でしょう? 私は北カリフォルニアの乾燥した爽やかな気候の中で夏を満喫しています。日々忙しく診療しながら、家族との貴重な時間を楽しみ、趣味の料理やゴルフも思いっきり楽しんでいます。カイロプラクターになって本当に良かったなと喜びと感謝の中で暮らしているのです。感謝する相手もたくさんいます。家族はもちろん仲間や患者さん、そしてカイロプラクティックという、素晴らしいギフトを私に届けてくれた先人たち、業界の方々です。

ドクターとして20年

私も気がついてみれば、大学を卒業しドクターとして20年目を迎えました。この20年間は本当に早かったです。卒業後まもなく結婚し、やがて息子が誕生し、息子が1歳になる前に独立開業をしました。クリニックもすぐに軌道に乗り、アシスタントやアソシエート・ドクターが次々と増えていきました。息子と3歳違いの娘が生まれ、まもなくクリニックが手狭になり、大きな物件に引っ越したのです。そして、翌年サンノゼに2軒目のクリニックを開業しました。サンマテオのクリニックは開業15年、そしてサンノゼのクリニックは10年目を迎えています。ただ無我夢中で頑張ってきた気もしますが、ただ楽しんで自分の好きなこと、やりたいことをやってきただけのような気もします。

自分が幸せを感じるとともに、業界への恩返しとして後進の指導もしなければならないと強く思って頑張ってきました。クリニックでの学生たち相手の練習会も今年で13年ぐらいはやっているでしょうか。インターンの受け入れやアソシエート・ドクターの受け入れも積極的に行ってきました。一時期はMDやPT、そしてマッサージ・セラピストまでいて従業員10名の大所帯になっていました。しかし、人が増えれば増えたで問題も多くなります。10名の給料を毎月払い、それぞれの個性をつかみ能力を引き出そうとしても、相手の気持ちがそれと噛み合わなかったりもしました。治療以外の苦労や仕事が膨大に増えたのです。

そのような状況下でも業界への恩返しや後進の指導への気持ちはなおも強く、テクニックブックを出版したり、日本での業界活動も増えていきました。それでも好きなことをしているわけで、苦労と感じることは少なかったように思います。どんな夢のような仕事でも半分は辛い仕事だというのが私がいろいろな人から学んでわかったことです。自分の仕事だって辛い部分があってもそれは当然であり、喜びの部分がそれを補って余るから楽しいのだと考えています。

つらいと感じること

そんな私が辛いと感じることが幾つかあります。その1番目は皆さんにも共通すると思いますが、資金繰りが大変なときです。これは徹底的に無駄を省くということを実行し始めて、いらない従業員をカットして人件費を削減し、余分なクリニックのスペースをカットし家賃を下げ、広告費も一時期の25%にまで削減し大変身軽になりました。今では私を入れてスタッフは5名です。それでも患者数は毎年増えて自分の労働量は以前よりも格段と増しているのですが、これは治療における労働量で私が一番好きな仕事です。従業員が減ったり、よりシンプルな治療スタイル、マネジメント体系にしたお陰で、治療以外の仕事は以前より減ったかもしれません。

2番目は患者さんが思うように回復せず、治療結果が出ないときです。ただし、このような場合は苦労の末に新たな治療法などを学び成長することも多く、結果的には大きなプラスとなることも多いのです。しかし、結果が出ないということは治療家として大変辛いものなのです。

3番目は人が思うように育たないときです。クリニックのフロント・スタッフ、アソシエート・ドクター、インターン、そして練習会に来る学生と私には育てなければならない人がたくさんいます。今までたくさんのDCが私のもとで学んでいきました。同じように教えているつもりでも、何年経っても身につかない人もいれば、ちょっと教えただけですぐに自分のものにしてしまう人もいます。いわゆる、デキのあまり良くない人に対し「これは自分の教え方が悪いからだ。申し訳ない。どうにかしなければ」という自責の念が強く辛かったのです。実際、テクニックの指導において、能力の差にかなりの開きがあります。そして私の教え方は、型にはめた教え方ではなく、まず理論や考え方を教えて、それに基づいたテクニックを考えていくものですから難しいのかもしれません。

物事を学ぶときにはコピー、すなわち真似をするというのが一番の近道です。しかし、これには落とし穴があります。上辺だけ真似ても中身が伴っていなければ、それは本当に学んだことにはならないのです。いつか、とてつもない壁にぶち当たりくじけてしまうことになるのです。ですから考え方を学び理論を学んで自分でテクニックをつくり上げていかなければならないのです。椎骨をアジャストするときに、理論があるからこの骨をどのように、どの方向へアジャストしたいかが決められるのです。

関節を鳴らすだけ…

その目的を正確に遂行するには、患者さんはどのポジションで、ドクターのポジションはここで、コンタクトの場所はこのポイントにこのように、そしてセットアップとテンションはこのように、最後にソラストとライン・オブ・ドライブはこのようにと、すべてが自ずと決まってくるのです。「ハイ、患者は仰向けで、ここにこのようにコンタクトしてください。そして軽く首を伸展させて回旋させてロックしたところでソラストしてください」と機械的にやれば、首のどこからか音はするのかもしれません。ときには、このようにして感覚的なものをつかんでもらうことも有効かもしれません。だけど、基本的な考え方や理論がなければ、それはアジャストではなく、ただ関節を鳴らしている作業に過ぎません。

このような考えを持っている私に学びに来ると、多くの学生やドクターができていたと思っていたアジャストができなくなってしまいます。必死にアジャストしても、うんともすんともいわなくなり大変落ち込むことになります。それは、それまでアジャストだと思っていたものが、考え始めた途端、理論と合わなくなってしまうからなのです。ただ音を鳴らすだけなら、首は回旋させるか側屈させれば音は出ます。でも、それはアジャストメントではないのです。上辺だけでなく、私のところに来たからには本当のアジャストメントを学んで欲しいと思うのです。

私のところで学ぶことはアジャストメントだけでなくカイロプラクター、または治療家としての考え方やマネジメント、クリニック運営まで多岐にわたると思います。一番大切なのはカイロプラクターとして、どのように治療や患者と向き合い接するかということです。世の中にはたくさん学ぶことはあるのですが、人によってその学習能力に差があるのは当然です。能力だけではなく、心構え、覚悟、努力といったものにも大きな差があります。能力が劣るものが心構えまでできていないとなると、これはもう手に負えません。誰が見ても明らかに心構えも努力もできていないのに、自分では「頑張っています」「努力しています」と軽々しく言っていては伸びるはずがありません。実際にこのような方は非常に多く存在します。そしてこのような方は恨み言を言いながら去っていくのです。

考える力を養おう

最近私が強く思うことは、学ぶ力と育つ力です。私が「どうして成長させてあげられないのだろう?」と悩むのは、実は非常におこがましい思い上がったことなのです。私のもとで成長していった人たちは私が育てたのではなく、その人たちに学ぶ力があって、育つ力があったのです。私が育てたのではなく、その人たちが勝手に育っていったのです。逆に育たなかった方は、学ぶ力や育つ力が十分になかったということなのです。誰かに手取り足取り教えてもらって、育ててもらおうなどと思っていては駄目なのです。相手から盗むという気持ちで自分から学び吸収し、成長していかなければならないのです。学ぶことができない、育つことができないのは自分のせいです。育つ力のある人はどのような環境でも育っていくものなのです。

私は普段からできる限り丁寧に指導しているつもりですが、上辺だけの指導はしたくありません。だから考える力を養ってもらいたいのです。それが本当の意味で学ぶということに繋がるからです。昨年に続き、今年も9月25日に東京で「マイ・プラクティス」という、考え方を学ぶセミナーを開催します。すぐに使える治療法などは教えるつもりはありません。学ぶことができる方、育つことができる方は、ぜひ受講してください。きっと素晴らしいセミナーとなることでしょう。学ぶことができない方は、お金と時間の無駄となってしまうでしょう。多くの方が私の熱意と知識、技術、そして考え方を学びに来て欲しいと心から願っています。

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