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カイロジャーナル70号

70号(11.2.25発行)
DCジャパン発足
セミナーは今後も継続
JCR、初の統一試験実施
キネシオテープ創始者 加瀬建造DCが米カイロ誌に登場
「カイロは腰痛治療の定番」
「カイロプラクティック&オステオパシー」から「カイロプラクティック&マニュアル・セラピー」へ

DCジャパン発足
法制化めざし「地道な活動」カイロプラクティックの真の姿を日本政府および国民に訴え、法制化を目指すために、日本ドクター・オブ・カイロプラクティック協会(DCジャパン)が昨年9月設立された。初代会長に、北海道帯広市で開業する後藤雅博DC、副会長に小畑良明DC(東京都杉並区)と但木澄子DC(兵庫県神戸市)が就任した。この協会は、正会員資格をカイロ法制度のある国でカイロ学位を取得した人に限っており、国内の教育機関修了者は正会員の対象としていない。その理由を「診断やX線写真の撮影および読影など、カイロプラクター本来の権利を要求するに見合った教育を受けた者に対するドクターレベルでの法制化の実現を目的とするため」としている。DCジャパンは当面の活動として、政府の政策議論をフォローし、機会があれば随時働きかけをしていく予定である。カイロの法制化や規制が国会や地方議会で議論される段階ではないものの、民主党の「規制仕分け」の検討項目に挙げられたり、行政刷新会議部会で事案として取り上げられるなど、政府には改革すべき事項としての認識は十分ある。また、統合医療学会とも積極的な協力を図っていく予定である。後藤DCは「法制化には、先達が幾度となくチャレンジして屈した現実があります。しかしそれを理由にアクションを起こさずに断念してもよいのか、何もしない傍観者より何かする方がいいという気持ちで、地道な活動をしていこうと思います」と会長としての決意を述べている。またノンDCのカイロプラクターについて尋ねると「技術や知識、経験が豊富な方がたくさんおられる。ただ政府等に法制化を働きかけるときにDCの方が明確な説得力がある。法制化の目処が立ったら一本化へ向けた方策を話し合えればと思う」と語った。

セミナーは今後も継続
強制的に中止求めたWFC
当社の抗議に返答世界カイロプラクティック連合(WFC)は昨年末、科学新聞社が提出した、日本におけるカイロプラクティック・セミナーに介入しないよう求める要望書に返答した。当社はこれに対し、2月中に再度意見を送付し、理解を求めていく。「日本には法的規制できない」これまでの経緯WFCは昨年夏、科学新聞社が予定していたカイロ・アジャストメント・セミナーに対し、招待講師に強い申し入れを行ってセミナー開催を中止させるという異例の強権発動を行った。これに対し、科学新聞社は9月16日付でWFCに手紙を送付し、強権的介入は遺憾であり今後このような介入をしないように申し入れを行った。また、WFCへの申し入れと並行し、当社では昨年9月、カイロ・セミナー実施者と受講者にアンケートを実施、セミナーに対する考え方を調査した。結果はカイロジャーナル前号で報告した通り、セミナー継続への賛成意見が多数を占めた。この経緯については、カイロジャーナルのウェブサイトの「論点・争点 カイロプラクティック・セミナーとWFC声明」の項目に詳しく記載されているので、ご参照ください。WFCの返答と今後の予定昨年12月、WFC事務局長から短い返信があった。WFCはその政策と会員団体の意向に沿って行動する旨が書かれていた。この手紙に対し当社は、論壇で紹介する文書を2月中にWFC事務局長宛に日英表記で返信する。今後当社は、当社セミナー対象者がWFCの主張と相容れない可能性があることをセミナー講師に十分説明し合意を得た上で、セミナーを開催していく所存である。国内外を問わず、当社の方針に賛同するカイロプラクターとともに日本のカイロの発展に役立てたら幸いである。WFC事務局長からの返答9月16日付のお手紙ありがとうございます。
WFCは日本のカイロプラクティックに何の法的規制もないこと、そして日本の状況がとても複雑なこと、そしてWFCポリシーには遂行的な説得力しかないことを理解しています。
あなたは、WFCに関与しないでほしいと要求しました。WFCが行うことは、日本カイロプラクターズ協会(JAC)を含む世界中のメンバーにより支配されます。WFCメンバーの立場はたいへん明確なものです。それは、カイロプラクターは非カイロプラクターにアジャストメントを教えるべきではないというもので、WFCは苦情を受けたときにそのような政策の強化を模索すべきだということです。2010年12月16日
WFC事務局長 デビッド・チャップマンスミス

JCR、初の統一試験実施
実質管理や採点はIBCE日本カイロプラクティック登録機構 (JCR・理事長=石川光男国際基督教大学名誉教授)は2月11日、第一回目となるカイロプラクティック統一試験を東京で行った。JCRは、一定レベルのカイロ教育を修了した人をカイロプラクターと認め、カイロプラクターリストに掲載、公表している。このリストによりカイロプラクターの現状を行政機関に報告し、カイロの資格化実現につなげることを目的に設立された。事務局は日本カイロプラクターズ協会内にある。受験資格には、細かい規定があり、今回の受験資格者は、
1.RMIT大学日本校2010年度卒業予定者
2.マードック大学インターナショナル2010年度卒業予定者
3.マードック大学インターナショナル2009年以降CSCプログラム卒業生
4.国際カイロプラクティックカレッジ2009年以降CSCプログラム卒業生
である。実際の受験者数は20数人であった。この統一試験の実質的な管理者は、国際カイロプラクティック試験委員会(IBCE)で、試験はすべてIBCEが作成し、当日の試験の監視や採点にも責任を持つ。IBCEは、米国カイロプラクティック試験機関(NBCE)の国際部門として独立した団体で、日本のほか、スペイン、ブラジルでもカイロ試験の提供をしている。METは全身の関節を扱うので多くシリーズがあるが、今回は脊椎編で、腰椎、胸椎、頸椎をカバーした。METの位置診断は、カイロプラクティックのリスティングに当たるが、考え方や命名方法がカイロとは違うので、慣れるのには時間がかかる。ダンブロジオ氏によると、近年米国のカイロプラクターもMETを学ぶ人が増えており、習得のために繰り返し参加する人が多いという。今回試験責任者として来日したマーティン・コーラシュDCは、2004年にNBCEの国際担当として初来日している。当時存在した日本カイロプラクティック教育評議会(JCEC)の会議に出席し、独立した試験機関の試験を採用することの重要性を説明したのだった(本紙49号・2004年3月12日号掲載)。それから7年、長い歳月を経て日本での試験が実現したことは、コーラシュDCにとってもさぞ感慨深いものがあるだろう。

キネシオテープ創始者 加瀬建造DCが米カイロ誌に登場
アメリカで開業するカイロプラクター向けの雑誌『The American Chiropractor』の1月号の表紙を、キネシオテーピング協会会長の加瀬建造DCの肖像写真が飾った。表紙に書かれた文字は「ケンゾー・カセDC 海千山千の男?」とでも訳したらよいのか、加瀬DCがどんな人なのか思わず読んでみたくなる見出し付き。中には5ページにわたる特集記事が組まれ、加瀬DCの生い立ちからナショナル・カイロプラクティック大学卒業まで、卒業後のキネシオテープの発明とその発展の軌跡、そして加瀬DCの治療と健康哲学、症例紹介までかなり踏み込んだ内容となっている。加瀬DCの持論、身体を暖めるより冷やすことに健康の秘訣を見いだしていること、塩の取り過ぎより欠乏のリスクを重視していることなどは驚きを持って紹介されている。30年以上の歴史を持ち、発行部数5万を誇る雑誌だが、主に北米をターゲットとしているため海外情報の掲載は多くはない。日本人カイロプラクターがこれだけクローズアップされるのは始めてのことである。メジャーリーガーがキネシオテープを使用するなど、アメリカで不動の地位を得た商品の開発者だからこその特集記事だろう。

「カイロは腰痛治療の定番」
強力な証拠出現世界的に権威のある脊椎専門誌『Spine』に昨年、腰痛治療では、カイロプラクティック・ケアが一般的なファミリー・ドクターの治療よりも優れていると結論づける論文が発表された。カナダ・バンクーバーのビショップDCを中心とした研究チームによる一連の研究の集大成とも言える論文である。『Spine』誌の2010年の医療介入科学優秀論文も受賞しており、カイロの有効性を示す強力な証拠として末永く引用され続けるだろう。この研究は「病院におけるカイロ介入の転帰研究:急性の機械的腰痛患者のメディカルおよびカイロによるマネージメント臨床ガイドラインに対するランダム化比較試験」と題するもので、鎮痛剤、運動療法、カイロを組み合わせた治療と、ファミリー・ドクターにより通常行われる治療の有効性を比較した。研究の背景には、証拠に基づいた治療が医療現場で普及していないという現実がある。1994年にアメリカ政府から発表された『成人の急性腰痛のガイドライン』を始め、各国の証拠に基づいた腰痛治療のガイドラインの中で、カイロが有効であるとされているのもかかわらず、医療現場ではほとんど採用されず、医師の思いこみとも言える治療が続けられている。では、一般医師の行っている方法と、カイロを含む機械的腰痛に有効との多数の臨床研究結果のある方法を直接比べたらどうなのか、というのが研究テーマである。脊椎マニピュレーションの有効性を示す多くの論文があるが、このように医療の現状と科学的証拠を直接検証する研究は始めてとも言えるのである。研究方法は、脊椎専門医が選択した96人の対象患者を、臨床ガイドライン組(カイロプラクターによる脊椎マニピュレーション、安静の回避、アセトアミノフェン(鎮痛剤)服用、8週間以内の仕事復帰)と、ファミリー・ドクター組(各医師が通常行っている腰痛治療を実施)に無作為に割り付けるランダム化比較試験である。カイロ治療は、4週間続けられ、評価は、開始から6カ月後までフォローされた。結果は、身体障害を計るローランド・モリス・スコアで、臨床ガイドライン組に著しい改善があり、明確な統計的有意差があった。身体、心理、社会性など幅広い健康度を計るSF-36では、臨床ガイドライン組の改善度が高かったが、統計的有意差は示されなかった。臨床ガイドラインに沿った治療は、特に身体機能の向上に著しく役立つという結果が示された。最近は多くの臨床研究で、カイロ・アジャストメントと、理学療法士や他の専門職による脊椎マニピュレーション、モービリゼーションが同じ治療介入として集計され、その効果の有無が論じられるようになった。しかし、この研究では、脊椎マニピュレーションを行ったのは、カイロプラクターだけであり、また、用いた方法も、側臥位での腰椎部のスラストだけであった。ファミリー・ドクター組で行われた治療は、様々な鎮痛剤のほか、理学療法士やマッサージセラピストによる徒手療法も含まれていた。それでも、臨床ガイドライン組の改善が著しかったという結果は、カイロ・アジャストメントの特異性、有用性を改めてクローズアップした。その意味でも、カナダで行われたこの研究は、世界のカイロの普及、発展に大きな力を与えたと言えるだろう。

「カイロプラクティック&オステオパシー」から「カイロプラクティック&マニュアル・セラピー」へ
学術誌が名称変更カイロプラクティックの論文を無料で読めるインターネット上の専門誌『カイロプラクティック&オステオパシー』が今年1月から名称変更し、『カイロプラクティック&マニュアル・セラピー』となった。このサイトは生物医学分野に関する200誌以上のインターネット専門誌を発行するBioMed Centralが管理するオープンアクセスのジャーナル・サイトで、発表論文はすべてピアレビュー(専門家の査読済み)で、質の高さが保証されている。この変更は、様々な徒手療法の研究者がこのサイトへの投稿に興味を示している実態を反映したもので、カイロ、オステオパシー分野に限らず、理学療法士、医師、この分野に興味を持つ研究者からの投稿を促進したいとしている。また、オステオパシー論文の割合の少なさも指摘されていた。運営母体の変化もあった。『カイロプラクティック&マニュアル・セラピー』は、オーストラリア・カイロプラクティック・オステオパシー学会(COCA)の学会誌としての役割も担ってきたが、昨年からヨーロッパ・アカデミー・オブ・カイロプラクティック(EAC)も加わり、COCAとEACという二団体の公式学会誌となった。EACには、イギリス、フランス、ドイツを含むヨーロッパ19カ国のカイロ団体が所属し、学術研究の発展と普及を図っている。名称変更は、EACの希望でもあり、今後はヨーロッパのカイロプラクターからの研究発表の活発化も大いに期待される。●カイロプラクティック&マニュアル・セラピー=http://chiromt.com/

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