アラン・クロアビエD.O.「まず感じて、それからどうするかを考えるのがオステオパシーの基本」
『末梢神経マニピュレーション』の著者アラン・クロアビエD.O.は、日本オステオパシーメディスン協会(JOMA)の招きで2010年5月2〜4日に来日、「日本語版出版記念セミナー」が開催された。
クロアビエD.O.に、著作が生まれるまでの経緯や、テクニック習得のヒントを伺った。
- 「末梢神経マニピュレーション」というテクニックは、体表から神経を触診し直接治療する方法として紹介されていますが、これはオステパシーの伝統的手法なんですか?
- クロアビエ:これは全くのオリジナル・テクニックです。もちろんゼロから何かができるわけではありませんから、オステオパシーの基本があったわけですが、何かをコピーしたということは全然ありません。
- どのようなきっかけで生まれたものなのでしょうか?
- クロアビエ:今から20年程前、私はバラル先生(ジャン=ピエール・バラルD.O.)と同じクリニックで働いていました。私たちはむち打ち症の患者の苦痛を軽くしてあげたいと思い、むち打ちの瘢痕組織をいろいろ研究していました。その中で、硬膜の固着と神経叢の緊張や固着を取り除くことにより、症状が非常に改善することがわかってきました。そこで結果として、生体力学的に中枢神経、末梢神経を研究するようになっていきました。
この手法を発見した頃、これが一つのコンセプトとなって、本を出版したり、翻訳されて世界中に紹介されたりするとは思ってもみませんでした。 - 『末梢神経マニピュレーション』はバラル先生とクロアビエ先生の共著ですが、テクニックの開発も共同作業だったのですか?
- クロアビエ:バラル先生はいろいろなアイデアを持っている人で、臨床上何か発見があるとそれを話してくれます。私もそれを試してみたり、また自分のアイデアをバラル先生に伝えることもあります。お互いの手法をそれぞれ使ってみて、より効果のあるものを選別するようにしました。そのようにして、より効果の高いテクニックに仕上げ、本にまとめました。
- 神経を直接マニピュレーションすると聞くと「すごいアイデアだけれどもそんなことができるのだろうか」と思ってしまいます。この本を読むだけでテクニックを使えるようになりますか?
- クロアビエ:簡単なものはすぐに使えます。この本はフランスで2004年に発売されたのですが、今もよく売れています。本の内容に興味を持ち買って、使ってみたら結構使えるので、もっと興味が出てセミナーに参加する、という人が多いです。私はアメリカでも教えているのですが、アメリカでも同じような経緯でやって来る人がほとんどです。
- 「簡単なもの」とは、例えばどのテクニックですか?
- クロアビエ:腋窩、肘前面、膝の後ろなど、くぼんでいるところで神経をあつかうテクニックが分かりやすく簡単だと言えます。
- ほかにも本からテクニックを習得するためのアドバイスをいただけますか?
- クロアビエ:一番重要なことは、頭で考えずに自分が感じたことをやってください。実際、頭で考えたことをやろうとする人が多いのです。そうではなく、まず感じて、それからどうするかを考えるのがオステオパシーの基本です。まずメッセージを受け取ることです。簡単なテクニックを手で感じたことをもとにやってください。
また、スタディーグループをつくって、みんなで勉強するというのはたいへんよい方法だと思います。アメリカではセミナー修了者が中心となって、いくつかの地域でスタディーグループがつくられ、臨床研究やテクニック習得の場となっています。 - 最後にこのテクニックを臨床にどのように組み込めばよいかを教えていただけますか?
- クロアビエ:オステオパシー診断学に通じることなので一言では言えませんが、症状に対する適応は経験的にいくつかあります。いわゆる神経痛やむち打ち症など。しかし物事を分けるというのはメディカルの考え方で、私たちの仕事とは違うものなので、この症状にこのテクニックというようなものではありません。
また、身体全体の健康のために末梢神経マニピュレーションを使うことができます。さらに、他のテクニックの前処理として用いて治療効果をさらに上げる、というような使い方もできます。
安全性という意味でも優れています。例えば急性の頸椎捻挫で他の手技が難しい状態であっても、私たちのこれまでの臨床で副作用が出たことはありません。ですので幅広く臨床に使用することができます。 - 本日はありがとうございました。また来日して、ぜひセミナー開催をしていただけることを願っております。
(聞き手:カイロジャーナル編集部)
書籍『末梢神経マニピュレーション』
日本オステオパシーメディスン協会
http://www.japan-osteopathy.com