カイロプラクティック・オフィスだよりfromアトランタ 第9回カイロプラクティックジャーナル

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カイロプラクティック・オフィスだよりfromアトランタ 第9回

予防の大切さ再認識 患者との会話を積極的に
カイロジャーナル91号(2018.2.26発行)より

医療費が高額なアメリカでは日本よりも予防医学に重きを置いていると感じます。例えば、インフルエンザの予防接種は病院へ行かなくてもファーマシー(日本で言うところの処方箋薬局)で予約なしで受けることができます。この国でカイロプラクティックが発達し、盛んなことも予防医学の重要性を皆、理解しているからでしょう。最近、その予防の大切さを再認識する出来事がありました。

ひどい肩こり 60代男性

通院歴8年の60代の男性患者さんは、日本から単身で来られ、日系企業の現地社長をしていらっしゃいます。来院のきっかけは、仕事柄デスクワークが多く、ひどい肩こりに悩まされてのことでした。また、この方は大変運動好きなのもあり週2回のジョギング、週1回のテニスとゴルフと、とにかくアクティブに動いていらっしゃっていたのですが、運動後の左膝痛も気になっている、とのことでした。

姿勢をチェックしたところ、矢状面で見ると肩が前に入っていて頭が前に移行している、いわゆる巻き肩、猫背になっていました。前額面では、頭は左に傾き頸椎も左に移行、左肩が下がり全てが左に傾いていました。横断面は、回旋は頸椎が左前方に、肩は左後方、そして腰は左前方に歪んでいました。左右の体重差は右に1キロ多く荷重しています。つまり、体全体が左に傾いているにも関わらず、体重差はほとんど同じ。そして、頸椎、肩、腰の歪みは反対になっている圧迫型です。

アルミ缶を足で踏むと缶は捻れてクシャクシャと潰れます。それと同じように、人間の体も捻れながら背骨が圧迫されていきます。治療は、左側の圧迫を取ることを主に上部頸椎テクニックのQSM3を施しました。3回目の来院時には痛みは90%軽減していました。姿勢の方も体重は1キロ左に荷重し、体全体の回旋の歪みが全て左前方に揃っていました。捻れ圧迫のとれた状態です。すると、体の傾きはあるものの膝痛はあまり出なくなっていました。そして、背骨が安定してきた5回目からはメンテナンスとして月に1度の施術に来ていただくようにしました。毎回多少左に傾きはあるものの、施術後の回旋はほぼ3mm以内、体重差も1キロ以内でした。普段の日常生活においても、良い姿勢を意識すること、運動前後のストレッチを欠かさないようアドバイスしていました。こうして約8年、相変わらずのデスクワークのようでしたが、初診時のようなひどい肩こりに悩まれることもなく、ご趣味のジョギング、テニス、ゴルフを満喫されていました。しかし、常に多忙なようで、来院されて施術中、前後もあまり世間話などをすることもありませんでした。私の方も、症状と姿勢改善に意識が向いていて、これ幸いと施術に集中していました。

しかし、先週の来院時に突然「この1月に定年退職になったので日本に帰国します。今日が最後になります。」と言われました。いつものように施術し最後のお別れの挨拶時には「カイロの施術を受けてこの8年、単身アメリカで大きな怪我や病気になることなく、健康に過ごせたのは本当にありがたく幸せなことでした。何かの症状が始まってから慌てて治療するのでなく、病気にならないように予防することは本当に大事ですね。ありがとうございました」とお言葉をいただきました。

私は、この言葉にとても感動すると同時に、最近、患者さんの現在の状態や症状に集中しすぎて、とても大事なことを忘れていたことに気づきました。カイロによる背骨の矯正は予防医学です。症状の治療、改善はもちろん第一優先ですが、もっと積極的に患者さんとコミュニケーションを図らなければいけないと思いました。患者さんの方から話してくれるのを待つのではなく、こちらからも話しかけ、日常の何気ない世間話を通じ、病気や怪我の兆候、変化を見逃さないようにしなければならないのです。

発明王トーマス・エジソンの言葉に「未来の医師は、薬を用いず、人体の骨格、食事、そして、病気の原因を探し予防するという事を基本にして治療するであろう」というのがあります。症状が辛くて治療するのは当然ですが、それよりも大事なのは予防することです。それを手助けできるのがカイロです。そんな初心を思い出させてもらった出来事でした。

矢島敬朗D.C. (やじま・よしろう)
和泉カイロプラクテイック・アトランタ(米国ジョージア州)院長
1970年東京生まれ
柔道整復師として働いた後渡米し、2009年ライフ大学卒業
上部頸椎調整をメインとしたカイロプラクテイック・ケアを実施する

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