徒手医学会第9回学術大会浜松カイロプラクティックジャーナル

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徒手医学会第9回学術大会浜松


カイロジャーナル60号(07.11.11発行)より

多彩な発表、内容充実

大都市圏外で初開催、例年と同規模静岡県浜松市のアクトシティ浜松で9月8日、9日、日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC)の第9回学術大会(会長=中川貴雄、大会長=木村功)が開催された。大会テーマは「歩行と運動-カイロプラクティックにおける全体性と内在秩序-」で、哲学から臨床知見まで幅広く網羅する招待講演と、充実した研究発表が行われた。

<河本教授基調講演>

治癒的介入の意味考察学術大会の大都市圏外での開催は初めての試みで、参加人数が減ることも心配されたが、2日間の参加者数は130人を越え、例年と遜色ない規模となった。基調講演は東洋大学哲学科で、科学論、システム論、オートポイエーシス理論などが専門の河本英夫教授が行った。『生命の「科学」と治療的介入』と題し、治療的介入の意味を最先端のシステム論から考察した。大方の臨床家にとってはなじみのない内容だったが、常に最先端の研究や学説をカイロプラクティックと柔軟に結びつけてきたJSCCを特徴づける講演であったと言えよう。講演後に大会長の解説を聞いて「難解な内容が多少は理解できた」という声もあった。

特別講演は2題。

三島中央病院整形外科部長で地元の実行委員でもある穴吹弘毅医師の「腰痛の診断と治療-マッケンジー法の有用性-」と、京都大学高等教育研究開発推進センターの小田伸午教授による「常歩(なみあし)式身体動作上達法」が発表された。穴吹医師は、脊椎外科領域の疾患とその治療、マッケンジー法の日常診断への利用などについて紹介し、脊椎外科の臨床という、一般臨床家には接点がありそうでなかなかない内容をわかりやすく紹介してくれた。

小田教授は、一時ブームともなった「ナンバ歩き」とも共通する身体動作「常歩」とそこから発展する身体操作の技を自らのデモを交えながら説明した。常歩における動的安定性と一般的歩き方における静的安定性の違いの概念など、発展させればカイロプラクティック・アジャストメント技術にも応用できそうな理論が展開された。この講演は、次に行われた小山田良治氏(五体治療院)のワークショップと連携する形で構成されており、相乗的深みがある内容となった。

一般講演は、回を重ねるごとに充実してきたが、今回は特に、症例研究、マニピュレーションの生理学的影響に関する研究、客観的評価法の確立に関する研究、リハビリ、エクササイズに関する研究など、これまでにないほど、バラエティに富む演題が集まった。学生や卒業生による共同研究や、卒業間もない若手臨床家の発表も活発で、今後の発展が大いに期待される。JSCCは来年で設立10年を迎える。日本のカイロプラクティック界には、学術研究と自由な交流の場としての学会がなかなか育たなかった現実がある。JSCCはそんな中で着実に毎年の学術大会を開き、実績を積み重ねてきた。今年の学術大会の成功は、業界内外の評価も定着したことの現れとも見て取れる。カイロプラクティックのさらなる発展と社会への還元のために10周年はさらに躍進してほしい。

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