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カイロジャーナル63号

63号(08.11.28発行)
徒手医学会学術大会、東京で開催
発展続ける「ソウルナイト」
海外講師2氏がセミナー
Drシュレット・インタビュー

徒手医学会学術大会、東京で開催
基調講演は斎藤氏「物語の医療学」日本カイロプラクティック徒手医学会(JSCC、会長・中川貴雄)の学術大会が、10月12、13の両日、東京・港区の日本赤十字社ビルで開催された。大会テーマは「ケアの本質―徒手医学からのアプローチ」で、患者ケアについての様々な概念やアプローチが紹介された。設立時が第1回大会だったので、9年目の第10回記念大会となった今回は、参加者が100人を切り例年より少なめではあったが、これまでより若干小さめの会場だったこともあり、交流しやすい雰囲気に包まれた大会となった。基調講演は、大会テーマの“ケア”に焦点を当てた内容であった。「物語の医療学―NBMとEBM―」と題し講演をした富山大学保健管理センター長・斎藤清二氏は、長年にわたり医学教育と臨床に関わってきた。NBM、ナラティブ・ベイスト・メディスンは物語に基づいた医療と訳される。ここで言う物語とは、「病を患者の人生という大きな物語の中で展開する一つの物語と見なす」ことで患者の視点を想像し共有することである。斎藤氏は、医療者の物語能力は「患者の病の体験を物語として理解し、尊重することができる。医療における多様な視点からの複雑な物語を把握し、そこからある程度の一貫性を持つ物語を紡ぎ出すことができる」ことであり、これらに基づいて患者のために行動できることであると説明した。そしてNBMとEBM(科学的根拠に基づく医療)の両方ともを大切にした「ナラエビ(ナラティブとエビデンス)医療学」を実践する姿勢の重要性を述べた。徒手療法の臨床の基本的あり方を考えさせられる内容であった。徳島大学の武田英二氏は、「食・栄養とストレス制御」について講演した。高脂肪食が自律神経のバランスを交感神経優位にさせ、内分泌系に対してはインスリンへの抵抗性を高めることなど、栄養の生理学的影響に関する貴重な講義であった。最新の栄養学の知識に基づき患者に適切なアドバイスができれば、徒手療法の治療効果を高めるのに大いに役立つことが改めて確認できる内容だった。ワークショップでは、守屋徹氏(守屋カイロプラクティック・オフィス院長)が「痛みのケアを考える」と題し、痛みの生理的機序のモデルを詳細にわたり検証した。患者への説明にもよく使用される痛みの原因モデルもまだまだ検証の余地があることなど、課題を示す内容となった。本学会誌上も含め、今後の議論につなげて行くにふさわしいテーマだろう。馬場信年氏(カイロプラクティック・オフィスすこやか院長)は「腰痛と生活動作関連」の発表で、日常生活動作のし易さと痛みの程度を指標とした、独自に開発した調査表の実用性、妥当性に関する研究発表をした。改善度の指標として機能する調査票の開発には膨大な労力が必要だが、臨床研究の発展に貢献する試みとして学会としてもサポートしていける分野であろう。パネルディスカッションは、パネリスト6人がそれぞれ、ケアに関して考えることを述べた。活発な議論と言うよりは、言葉を選んでのゆっくりとした発言が多かった。しかし会場の感想は概ね好評で、このパネルディスカッションを通して会場の参加者も思索する機会を得たようであった。この他、一般講演7題、ポスター発表5題が発表された。今回は、ワークショップの内容の今後の会員協力の可能性など、今後につなげて行ける要素があることも大きな功績だろう。新会員の参加が少なく研究発表がないなど、問題も抱えているが、今後の発展のための芽は今大会でいくつかあったと言えるだろう。それらを絶やさぬよう大切に育てていくことは今後の大切な課題の一つだと思う。(第10回学術大会長=櫻井京)JSCCのウェブサイト=http://www.jsccnet.org/index.html
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発展続ける「ソウルナイト」
札幌、東京で開催
熱い思いは不変5月24日に福岡、7月5日に仙台と、「夢」をテーマに北上していったソウルナイトが、同テーマによる最終回を8月30日に札幌で華々しく飾った。会場には一般の方を含め100人を越す参加者が集い、碓田拓磨氏の司会により、坂本剛(シオカワスクール講師)、後藤雅博(帯広市在住、DC)、岡井健の3氏が、それぞれの持ち味を生かし、なぜ自分たちがカイロプラクティックをやっているのか、それぞれのエピソードを披露しながら熱く語った。それからひと月余り、今度は今年最後のソウルナイトが、新たな試み「Plus(プラス)」を携え、「チャレンジ」をテーマに10月4日夕から5日夕にかけて、東京・大井町駅前の品川区立総合区民会館「きゅりあん」小ホールで盛大に行われた。このPlusは、これまでのスピーチに加え、ワークショップ形式で講師各人のテクニカルな部分も含め、もっと深いところまで紹介してもらおういうもので、第1回となった今回は、初日の夜にフィロソフィー・ナイトのときからの常連、田中稔久、大陰幸生、岡井健の3氏が、三者三様のチャレンジを語った後、翌朝からのスタートとなった。これまでの一連のイベントを、縁の下で支えた中村貴博氏が司会役にチャレンジし、いつもは司会役の碓田拓磨氏が、ライフワークである姿勢をテーマにトップバッターを務め、これまでには考えられないような競演が続いた。二番手は、パシフィック・アジア・カイロプラクティック協会(PAAC)の重鎮で、つい3週間前に同協会恒例の国際セミナーの講師を務めたばかりの小柳公譽(まさたか)氏。今回は今月ジャパンライム社から発売されるDVDと同名の「シンクロ矯正法」をテーマに、その発売に先駆けて、その独自の考え方に至った経緯を、実技を交えて独特な穏やかな語り口で丁寧に解説した。午後からは、シオカワに神庭(かんば)あり、と言われる神庭政良氏。これまでほとんど他団体のイベントには登場したことのない彼だが、今回「カイロプラクティック神庭流」と題して、デモと笑いをふんだんに盛り込み、身振り手振りよろしく、予定時間を大幅に延長する熱演ぶりで、内容はカイロプラクティックの醍醐味そのものであった。最後はソウルナイトの顔、岡井健氏。前夜はチャレンジについて語り、この日は10月1日に発行されたばかりの著書、「カイロプラクティック経営成功哲学」(科学新聞社刊)をテーマに、この本をなぜ執筆するに至ったかを朗々と、ときには切々と語った。岡井氏は福岡、札幌に次いで今年3度目の来日である。その間、今回の新刊も綴った。その原動力を考えるとき、ソウルナイトを開催する意義が自ずと浮かび上がってくる。今後ソウルナイトがどう発展していくのか想像もつかないが、今回のPlusが明らかに今後のあるべき姿を示したことだけは間違いない
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海外講師2氏がセミナー
科学新聞社では、現在2人の海外の講師によるセミナーを定期的に開催している。Drシュレットは、米国を代表するカイロプラクティック・セミナー講師で、アジャスト・テクニックだけでなく、教育の技術にも定評がある。Drダンブロジオは、様々なオステオパシー・テクニックに精通し、臨床で成果をあげるヒントをたくさん持った世界的に人気の講師である。来年もこの2人を招いてのセミナーを予定しているが、今年の夏と秋に開催されたセミナー内容を紹介する。教育技術にも定評
Drシュレット米国のカイロ・テクニックセミナー講師として絶大な人気を誇るDrシュレットが来日し、8月29~31日の3日間にわたるセミナーが東京・港区で開催された。来日4回目となった今回のセミナーでは、これまで教えてきた四肢のアジャストに加え、初めて脊椎テクニックも教えられた。脊椎テクニック貴重な極意伝授脊椎テクニックは、ディバーシファイドを基盤としているが、セットアップの仕方、力の加え方など至るところにDrシュレットならではの技術と工夫があった。また、脊椎におけるキーポイントとなるサブラクセ―ション部位、サブラクセーション・パターンについての講義もあり、臨床のヒントとなる貴重な内容のセミナーとなった。Drシュレットは、セミナー中はいつもできるだけ多くの参加者に、全身アジャストの体験治療をサービスしてくれる。これまでのセミナーでは、脊椎アジャストを体験しても、Drが何を検査して、どのような意図でアジャストしているかが謎だったのだが、今回の講義を受けた参加者にはその謎が明らかになったわけである。アメリカでもほとんど教えていないという“脊椎アジャストの極意“を学べた参加者は貴重な機会を得たセミナーだったと言えるだろう。Drシュレットは、脊椎アジャストの本とDVDを来年リリースする予定である。日本語版は、英語版が出来上がった後、なるべく早い時期に科学新聞社より刊行する予定である。また、次回の来日セミナーは5月に予定されている。臨床のヒント豊富
DrダンブロジオDrケリー・ダンブロジオのセミナーが、11月1~3日の3日間にわたって東京・港区で開催された。今回のテーマは「トータル・ボディ・バランシング(TBB)」で、日本では初めて紹介されたテクニックである。DrダンブロジオはTBBを治療の骨格となるテクニックと位置づけているので、彼の治療法を理解し習得するには、最も重要なテクニックと言えるだろう。治療の骨格となる「TBB」初紹介これまでの来日セミナーでも、何回かTBBを使った治療のデモンストレーションはしてきたが、実際に学べる初の機会とあって、参加者は非常に熱心に練習に取り組んでいた。TBBはクラシカル・オステオパシーをベースに、Drダンブロジオが構成した基本の型のようなテクニックであり、この基本の型を一通り行うと、必ずチェックすべき大切な治療ポイントが網羅されるようにできている。また、ポジショナル・リリース・セラピー(PRT)や、筋エネルギー・テクニック(MET)などの手法は、TBBの肉づけとして、必要に応じて自由に付け加えていくことができる。最近日本でも注目を浴びるクラシカル・オステオパシーだが、Drダンブロジオは昨年2月に99歳で亡くなったオステオパシーの巨匠、ジョン・ワーナムDOから直接教えを受けた一人である。ワーナムDOは「身体は一つのシステムであり、オステオパシー治療はホリスティックなものである」という、初期のオステオパシー哲学を実践し続けたイギリスのオステオパスだ。 Drダンブロジオはクラシカル・オステオパシーの発展の歴史や哲学、ワーナムDOの逸話など、なかなか聞けない貴重な話も披露してくれた。最終日の11月3日には、筋エネルギー・テクニック(MET)胸椎編も行われた。METは実際には3日間のコースだが、部位別で4時間に区切って行っている。前回3月の来日では、仙骨編、骨盤編の2部位を行った。METはオステオパシーのリスティングを使用するので、それになじみのないカイロプラクターには難しい面もあるが、オステオパシーの関節診断を学ぶには格好のセミナーと言えるだろう。Drダンブロジオのデモンストレーションは、一回のMET治療で姿勢が大きな改善を見せることを示し、関節の治療としてのMETの素晴らしさを実感させるものだった。Drダンブロジオは、来年からアメリカのバラル・インスティチュートで本格的に講師活動を始めるなど、ますます忙しくなっていくが、引き続き日本で定期的なセミナーを行っていく予定で、来年3月にも来日予定である。紹介した2人の海外講師の今後のセミナーの日程、内容については、決まり次第随時ウェブ版カイロジャーナル(https://chiro-journal.com/old/)で紹介していく予定である。

Drシュレット・インタビュー
自発的に学ぶ人だけが来る
「日本で教えるのは楽しい」――脊椎のDVDと本を新たにつくられるそうですね。かなり前から作成は進めているのですが、セミナーで短期出張を繰り返しているので、まとまった時間が取れずに中断しています。来年こそは発表したいと思っています。この脊椎アジャストの本とDVDでは、様々なアジャストが紹介されています。頸椎、胸椎、腰椎、骨盤のアジャスト、そして特に重要な頸胸移行部、胸腰移行部のアジャストを解説しています。パルペーションの仕方のレビューも含まれます。――セミナーでは、セットアップにおける3ポイント・テンションの重要性を強調されていましたが。そうですね。そういったパルペーションやアジャストのコツとなること、カギとなることを紹介して、セミナーに参加しなくても、ディバーシファイド・スタイルのカイロ・アジャストを学べる内容とする予定です。――日本でセミナーをした印象を語っていただけますか?日本で教えるのは、とても楽しい体験で、いつも満足しています。日本のカイロプラクターと学生は、とても熱心で講師に対して丁寧なのが印象的です。今回は脊椎アジャストを初めて教える機会を得たのですが、クラスの雰囲気から皆さんが満足してくれたのを感じました。来年また来日してこのフォローアップができればと思っています。私は日本で教えるときは通訳を介さなくてはならないわけですが、参加者の皆さんは講義のときに常に私の方を見ています。これは世界のどこの国でも同じというわけではありません。単位取得のためにセミナーに来る人が多い国もあります。しかし日本は違います。自主的に学びたい人だけが来ています。私はその状況がとても好きなのです。私は教えるときはいつも新しいアイディアが湧いてくるのですが、今回もそうでした。説明をシンプルにしたし、テクニックを改変しました。これらの変更は上手く働いたと思います。――今回の参加者に何かメッセージをお願いします。習ったテクニックをできるだけ機会をつくって練習してください。たくさん練習すれば、より上手くなります。練習しなければ、より多く忘れてしまいます。皆さんは何度かフラストレーションを感じるでしょう。と言うのは、「自分は上手い」と感じて、「いやそうではない」と感じる、そしてまた「上手い」と感じ「やっぱり下手だ」と感じる。これを5,6回繰り返したら本当に自信が持てるレベルになっていることでしょう。ですから毎日繰り返し練習してください。特に脊椎アジャストではそれが重要です。

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