《第19回》結束力と奉仕精神カイロプラクティックジャーナル

  《第19回》結束力と奉仕精神

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岡井健DCのI Love Chiropractic ! 《第19回》結束力と奉仕精神2011.06.26


カイロジャーナル71号 (2011.06.26発行)より

早いもので今年ももう半分を終えようとしています。3月に東日本一帯を襲った大地震は未曾有の大災害を引き起こしました。それはわれわれの価値観さえも根こそぎひっくり返すような大きな衝撃をもたらしました。今、自分にできることは何だろうと自問自答しながら過ごした方も多かったのではないでしょうか。困っている人、苦しんでいる人のために何かをして上げたいという、強い衝動に駆られ行動を起こした方も多かったのではないでしょうか。また、その気持ちがあっても何をしたらいいのかわからなくて戸惑った方もいらしたことでしょう。

私は、災害は悲惨でとても辛い出来事だったけど、その後の多くの方の思いやりや行動力、そして国民が力を合わせて協力しようという姿に、とても感動し体の震えを止めることができませんでした。母国の国民が誇らしく思えました。物資が足りないと聞けば寄付を申し出る人が後を絶たず、買占めを控えるように言われればその制限を守り、不便さの中でも秩序を守り混乱に乗じての犯罪もほとんどなかったと聞いています。最近は忘れ去られていると思っていた日本人の律儀さ、親切さ、思いやりや結束力、忍耐力、奉仕精神などが、これほどまでに、と心温まる思いでした。甚だ失礼ながら「やるじゃないか、日本人!」と素直に感銘を受けたのです。

と同時に、われわれカイロプラクターも互いに相手を思いやり、協力し合い、業界のため自分ができることを一生懸命考えて結束できないものかと感じてしまいました。自分に都合の良い持論を展開するのではなく、業界の発展のため患者のため、自分にとって辛い努力をできる人が増えてくれればと思いました。

人間はどうしても保身を考えてしまいます。自分や家族を守ることを本能的に優先させます。それは間違ったことではないでしょう。しかしわれわれは、人のために何か役立ちたいという気持ちも同時に持ち合わせているのです。自分が良ければそれで良しという身勝手な考えの人はそう多くはないはずです。人に喜ばれ感謝されることほど自分の存在価値を感じられることはないからです。

特に医療関係に従事する方々には他人に感謝されることに生きがいを感じるタイプが多いと思います。カイロを単にお金を稼ぐ手段と割り切っている人は、やはりどこか薄っぺらなところが露見してしまい、業界内で尊敬されることはないでしょう。お金を稼ぐことは大いに結構です。だけどそれだけではなく、人一倍カイロや患者の治療に一生懸命でなければ仕事もつまらなくなってしまいます。何もカイロじゃなくても稼げれば何でも良いという方は、やがてカイロを辞めてしまうことになるでしょう。曲がりなりにもカイロの臨床を長年やってらっしゃる方々は、カイロが好きで患者さんのために良い治療をすることに喜びを感じているはずです。

人間というのはまことに不思議な生き物だと思います。他人に正しいカイロを一生懸命やるべきだ、業界発展のために努力すべきだ、などとあまりにも理想主義的なことを言われると、なんとなく鼻についてしまうのです。実は自分だって、似たような考えを持っていたにもかかわらずです。自分が言う分には自分の言葉に酔いしれ、なんて自分は立派なことを言っているんだろうとなるのでしょうが、他人から先にあまりに正しいことを言われると、なんとなく素直には賛同できないものなのでしょう。

私にもそんな思いにとらわれることがあります。それに気づいたときは、慌てて自分を諌め客観的に判断し正しく行動すべきだと反省します。皆さんにもそんな経験があるのではないでしょうか。危ないのはそんな意固地になっている自分に気づかず、本来自分も同じ様な考えを持っているにもかかわらず、相手が言っていることが癪に障り、知らず知らずのうちに自説を曲げてしまうことです。意地を張って自分本来の考えを見失ってしまうなんておかしな話です。でも、世の中ではよく見かけられる光景ではないでしょうか。

私はこのような辛い震災という経験から学んだ様々なことを、あらゆる面で有効に活用し役立てるべきだと思います。今回の震災によって多くの方が非常に不自由な生活を強いられました。動いているはずの電車が動かない、コンビニに並んでいるはずの水がないなど、首都圏の人たちもかなり不自由な思いをしたようですが、被災地では未だに家族と一緒に明るい電気の下で笑いながら食べるささやかな夕食、一日の疲れを癒す温かいお風呂、自室で布団にくるまり朝までぐっすり眠ることなど、今まで当たり前だったことが一瞬にして消え失せてしまったわけです。

こんなとき人間は、自分にとって本当の幸せとは、と考えさせられてしまうんでしょうね。私も例外ではありませんでした。私は日々平和を愛する家族と共に過ごすことほど、幸せなことはないと再確認しました。そして、そのためには家族が揃って元気で健康でなくてはと。見栄や自己顕示欲などより、皆で仲良く幸せに生きることこそが幸せなんだ。誰が一番でもいい、皆で幸せになれれば。自分のことを考えるより、自分の周りのことを考えて行動することで、実は自分も幸せになれるんだ、などと次々に頭に浮かんできました。われわれの業界でも、自分が誰よりも偉くなければいけないとかではなく、業界の皆が幸せになれる道を模索できればと考えさせられました。

これから日本は様々な障害を乗り越え復興していかなければなりません。そのためには大きなエネルギーを必要とします。そのエネルギーは国民一人ひとりから発せられるものです。そのためには皆が元気で健康でなければなりません。当然、われわれカイロプラクターの役目も重要になってくるはずです。長期にわたる復興には健康が一番と国民に訴え、カイロを啓蒙していかなければなりません。そのためには、ただ情熱だけでなく、国民に恥ずかしくない知識と技術、倫理観、そして思いやりを持っていなければなりません。自分自身が辛い勉強や技術の修練を避けていて、周りの人々を幸せにできるなどとは到底思えません。辛くても自分を高めていけば結果として自分自身もまた幸せになれると思うのです。

日本ではまだカイロが法制化されていません。カイロプラクターは誰一人、公に認可されていないのです。鍼灸、柔整、医師という資格を持ってカイロを行っても、カイロプラクターとして認可されているわけではありません。業界全体として、これは非常に危険な状況だと自覚しなければなりません。いつ一切の手技療法を無免許で行うことを禁ず、医師の監督下でなければならない、などということが起こらないとも限らないのです。

大体、先進国・日本において無資格で手技療法が行えるということ自体、尋常な状態ではないと思います。国家資格がない者が行うべきではないというのが普通の考え方だと思います。日本は手技療法の特殊な歴史からそれがまかり通っていますが、いつまでもそれが続くと考えるのは危険だと思うのです。いつ外敵からカイロが糾弾されるような事態がやってこないとも限りません。そうなってから慌てて業界が一つになろうとしても遅いのです。カイロ界がまとまり、レベルの高い基準をクリアし、国が認めざるを得ない状況に成長する、というビジョンを持つ人がどんどん増えてくれることを願っています。今のままで良しと思っていても、今のままでいられなくなってからでは遅いのです。

ならば、どうすれば良いのか、それを考えていくのがわれわれ全員の仕事です。誰かがやってくれるのではなく、一人ひとりが客観的に患者や厚生労働省の担当者になったつもりで、どのような医療だったら、また団体だったら認めたいと思うかを真剣に考えるべきです。あなたがもし厚労省の担当者だったとして、現時点のカイロを認めて欲しいと申請を受けたらどう判断しますか、今のままで認めますか、それはとても無理でしょう。あまりにもまとまりがなく、多くの団体が反目し違ったことを言い、教育レベルも倫理観もバラバラなのです。どうやって誰を認めろというのですか。

私は皆さんのお子さんたちが成長した時代の日本に、カイロがしっかりと国の認める医療として存在して欲しいのです。厚労省が認めるであろう条件に見合うように努力ができるでしょうか、それとも自分が努力しなくても済むように条件を捻じ曲げようとするでしょうか。辛い質問ですね。鼻につく話ですね。だけど一般から見れば当然の話なのです。

もしわれわれが強い結束力と、業界のため国民の健康のために奉仕精神を発揮していくことができれば、必ずカイロが正式に国に認められる日が来ると信じています。そのためには一人ひとりが努力を惜しまないことです。そして業界団体は、排他的にならず誰もが魅力的に感じる団体をつくる努力をすることです。無理に意見を聞かせるのではなく、皆が仲間に入りたくなるような団体であるべきです。教育レベルが低い者、倫理観が低い者を切るのではなく、再教育できる現実的なプログラムを構築し、10年スパンで業界の基準をつくる必要があるのです。そういったビジョンのない無責任な教育者はいないと信じています。

業界としてはっきりした指針を示し、カイロの教育機関にそれに順ずるように一生懸命説得していかなければなりません。業界が繁栄すれば学校も同じように繁栄します。業界に魅力がなくなれば学校も廃れていきます。その場しのぎの繁栄でなく永く安定した繁栄を目指したいものです。皆さんにはきっとそれができると思います。これから皆で真剣に業界の将来を考えていきたいですね。


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