《第20回》カイロ啓蒙のススメカイロプラクティックジャーナル

  《第20回》カイロ啓蒙のススメ

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岡井健DCのI Love Chiropractic ! 《第20回》カイロ啓蒙のススメ2011.10.28


カイロジャーナル72号 (2011.10.28発行)より      

本紙読者の皆さん、いよいよ秋本番で素晴らしい季節になってきましたね。今年の日本は火山噴火、地震、津波、原発に台風と様々な災害に見舞われました。命あることに日々感謝して自分が今できることを一生懸命頑張ろうと多くの方が熱い思いを胸に抱いたのではないでしょうか。

本来なら、災害などなくても普段からそのような気持ちを持って生きているべきなのでしょうが、われわれ人間はつい楽な方へと、見事なまでに屁理屈や言い訳を思いつき逃げてしまうものです。今回の災害でわれわれが学んだ教訓や得た思いが、「喉もと過ぎれば」とならないように願っています。そして今年の秋は、例年にも増して一生懸命学び、自分を高めて人々のためになれる人間へ成長できればと思っています。

震災後、カイロプラクターとして自分にできることは何かを考えたとき、残念ながらアメリカから被災地に週末ごとに出かけることもできないし、業界内の垣根を取り払い業界のレベルアップのお役に立ちたい、というこれまでの活動も正直言って頭打ち感が否めない状態でした。そこで今回のソウルナイトを企画した段階で、偶然にも数名の先生方から「一般の方を対象に啓蒙を行ってはどうか」という案が出されました。

その要望をしばらく心静かに頭を冷まして考えてみました。現場からの声には耳を傾けるべきです。この要望を寄せられた数名の先生方は、奇しくも皆さんとても元気があって活躍している先生方でした。今、元気がないと言われるカイロ業界にあってもちゃんと前を向いて頑張っている先生方はたくさんいますし、多くの患者に愛され繁盛している治療院もたくさんあります。その元気のある先生方からの要望は前向きで非常に大切な繁栄へのヒントがあると思ったのでした。

残念なことにカイロの業界は未だまとまりがなく、カイロの学校も入学志望者が激減の一途を辿っていると聞いています。さらにとても悔しいことに、世間では怪しい民間療法との認識を受けているのが現実です。カイロほど科学的でメカニカルでシンプルな理論の医療はない、と私は思っているのですが、一般の方にはただ骨をボキボキするだけの怖ろしい療法に思われているのです。

多くの方にカイロの素晴らしさを認識していただき、その恩恵を受けて健康な生活を送ってほしいと願います。きっと、大勢のカイロプラクターが私と思いを同じとしていることと思います。そのような方々が真剣に啓蒙に励んでいるのは確かです。しかし、今までのわれわれのカイロの啓蒙のやり方が少々ズレているように感じられるのは私だけでしょうか。一般の方が知りたがっていることより、自分たちが伝えたいことの方が大切になって、自己中心的な啓蒙になってしまっていることが多かったように思われます。

カイロを正しく知ってもらうということは大切ですが、そこに私たちが長年陥っている落とし穴があると思います。正しいカイロという定義が業界内でてんでバラバラなのです。それぞれが自分が一番、自分たちが正しいと思って自分たちなりのカイロの正当性を主張し、相容れぬ状況が続き、一般の方までに自分のテクニックやフィロソフィー、学位が他よりいかに優れているかを説き、他のカイロがどれだけ劣るかを語るわけです。

要するに一般の方には、まるでカイロプラクティック業界の悪口を言っているように聞こえます。そこでカイロに対するネガティブなイメージができ上がってしまいます。ストレートがミキサーをけなしたところで、一般の方には何が違うか何が悪いのかわかりません。アクティベータ派が背骨をボキボキ鳴らすテクニックは危険だと言えば、間違った危険なカイロのイメージを植え付けてしまいます。結局はカイロ全体を傷つけ自分で自分の首を絞めることになるのです。そんなネガティブなイメージの啓蒙活動に励む一方、業界全体の発展には意識が希薄です。自分の治療院、自分たちのテクニックや団体の繁栄を考えても業界全体が落ち込めば、やがて自分へそのツケが回ってくるものです。

われわれが一般に対し、カイロを啓蒙するとき注意すべきことは、カイロプラクティックのシンプルな形をわかりやすく興味を持てるように説明して上げることです。難しすぎる内容だったりポイントがズレた説明をしても、一般の方にはわからないのです。いきなりハービー・リラードやイネートの話を持ち出すのはあまり得策とは言えないでしょう。大切なことでもわかりにくいことはあります。

まずはサブラクセーションがどのような問題なのかを、なるべくシンプルにメカニカルに解剖学的に説明できればいいですね。そして、そのサブラクセーションを治療することで、どのような作用が身体に起こるかを生理学的かつわかりやすい言葉で説明できるといいでしょう。そのときにわかりやすい例として、症例を用いることは大変有効だと思います。症例や体験談は一番わかりやすく身近に感じられる話ですが、なぜカイロが有効だったかを説明できないのでは少しインパクトに欠けます。ミラクルめいた魔法のような症例を持ち出すのも、その効果のメカニズムが理論的に説明できないのであれば、人によっては怪しげに感じることもあるので止めたほうが無難でしょう。

アジャストメントのテクニックについては、いろいろな方法があってそれぞれ効果があり、患者さんの好みによって選択すればいいことなのです。私たち個人のテクニックの好みや情熱と患者の好みとは別なのです。ガンステッドを情熱を持ってやっている先生の治療よりアクティベータを好む患者さんもいるし、逆にアクティベーター治療よりガンステッドがいいと言う患者さんもいます。われわれは自分の好きなテクニックに情熱を傾け自信を持つことは大切ですが、他のテクニックを批判したり悪く言う必要はありません。

それぞれのテクニックの特色を伝え、なぜ自分が多くのテクニックの中からこのテクニックを選んだのか、その魅力を語ると非常にプラスになると思います。それぞれの先生がそれぞれのテクニックに情熱と愛情を持って努力し、多くの方のお役に立っているのですから、それを自分の好みに合わないからと批判する必要はないと思います。

私も過去にこのような過ちを犯してきました。それぞれのテクニックにかける方々の情熱や努力を知らずに、容易に公の場で非難するようなことは誰のためにもならないばかりか、業界全体を貶めることにもなりかねません。ですからカイロプラクティックの啓蒙をするときにテクニックの話から入るのでなく、サブラクセーションがもたらす身体への影響、そしてアジャストメントによってどのような変化が身体に起こることで、結果として様々な効能があることを、理論的にわかりやすく人々が興味を持つように伝えるべきだと思います。

アメリカでよく言われるのは、大衆がカイロに興味を持って知りたがることは、一番に自分や知人が今苦しんでいる問題に対して効果があるのかということです。二番目はどれぐらいの期間で治るのかということです。三番目はいくら費用がかかるのかということだそうです。その後に治療は痛くないのかが続き、どんな治療をするのか、先生はどんな教育を受けているのか、カイロの理論や歴史、テクニックの種類などはかなり後のほうになってしまいます。カイロプラクターとしては、カイロがどのような理論でどのように治療するかを伝えたいはずです。

ですから、相手が知りたい「効果があるのか?」という疑問に、カイロの理論やアジャストメント効果を説明しながらしっかり答えて上げることです。ボキボキに対する恐怖感を取り除くのであれば、アジャストメントを否定するのではなく、そのメカニズムと重要性を説明し、痛くないという事実を自信を持って伝えることです。どんな方でも面白い興味深い話を聞くのは好きですから、そのような話ができるようにトレーニングしなければなりません。退屈な話や要点のない話、情熱のない話に耳を傾けるのは苦痛です。だけど上手に啓蒙するということは本当に難しいです。そこで今回のソウルナイトは一般への啓蒙を特に重視して、一般の方にもカイロプラクターにとっても興味深いバラエティに富んだ内容を構成してみたのです。そして皆で一緒に、一般の方を啓蒙しファンを増やしたいと願ったのです。

これからもカイロ業界全体のために、一般の方に公にカイロを啓蒙していく方法を模索していきたいと思っています。テクニックやフィロソフィー、そして学位の壁を乗り越えて素晴らしいカイロプラクティックというものを、一般の方になるべく身近に感じて興味を持っていただけるようにしたいと思っています。

業界内では、それぞれが正しいと思う意見をぶつけ合っていく現状は変わらないでしょう。正しいカイロとは何かを業界内で議論しても、なかなか意見の一致は見られないでしょう。今は外からのカイロへの理解と需要を高めることで、業界に活気を吹き込んでいくことが大切だと思っています。私は純粋にカイロがサブラクセーションをアジャストすることで、身体に起こす効果をわかりやすく興味深く伝えていくことから始めていきたいと思っています。もし、皆さんの中で少しでもこの考えに賛同してくださる方がいましたら、これからぜひ力を貸していただきたいと願っています。


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