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スポーツ・カイロプラクティック 立方骨2015.08.14

立方骨
カイロジャーナル81号(2014.10.1発行)より

解剖学

立方骨は足の外側に位置するピラミッド型の骨です。この骨の前側で第4、5中足骨と、内側で外側楔状骨、舟状骨と、そして後側において踵骨と関節を形成しています。立方骨と踵骨が形成する関節は踵立方関節と呼ばれ、横足根関節(またはショパール関節)の一つです(もう一つは距舟関節)(図1)。また、様々な筋肉や靭帯の付着部となっています。立方骨に付着する筋肉には、対立筋、小趾屈筋、母趾内転筋斜頭、短趾屈筋、後脛骨筋があります。また、靭帯には足根中足靭帯、楔立方靭帯、立方舟靭帯、踵立方靭帯があります(背側と底側)。さらに、長足底靭帯、底側踵立方(短足底)靭帯は立方骨の足底部に付着しています。また、舟状骨と外側楔状骨の間には骨間靭帯があります。立方骨の外側面には溝には長腓骨筋腱が走行しており、腱鞘を介して立方骨と癒合しています。

図1 横足根関節は踵立方関節と距舟関節によって構成されている。

立方骨のバイオメカニクス

歩行時、舟状骨と立方骨は一緒に動くため、踵立方関節は横足根関節(距舟関節と踵立方関節)からの影響を強く受けます。1踵立方関節では、踵骨隆起を中心とする前後方向へ伸びる軸を中心に回転運動が生じます。2,3この回転運動は回内または回外と呼ばれます。

踵立方関節の関節面は凹凸状になっています。立方骨側の関節面は凸状(円錐状または突起状)になっており、それが踵骨側関節面(凹面)と噛み合っています(図2)。立方骨の運動軸は、この突起を長軸方向に延びています。突起は立方骨内側から後方へ向かって(踵骨へ向かって)伸び、先端はやや下方を向いています。立方骨側の関節面はこの突起の背外側になります。この部位が踵骨側の関節面(底内側)と合わさっています(さらに底側踵立方靭帯により補強)。

図2 踵立方関節の関節面の形状と立方骨の回旋の運動軸

以上の説明からもわかる通り、踵立方関節では立方骨の突起を運動軸とする回旋運動(回内/回外)が生じます。この回旋運動の可動域は約25°あり、4運動軸は地面に対して52°の角度で後下方から前上方へ伸びています(図2)。

中立位において、踵立方関節は完全に噛み合っておらず、緩みの位置となっています。しかし、立方骨が回内すると踵骨側の関節面と完全に噛み合うようになります(締りの位置)。従って、ここで立方骨の回内制限が起こります。さらにこの時、踵立方靭帯が伸張されることで、より強固な関節の安定化が生じます。一方、回外では逆のことが起こります。つまり、回外の主要な(一次的)制限要素は踵立方靭帯であるため、この靭帯が伸張されることにより立方骨の回外は制限されます。しかし、回外位において踵立方関節は完全な締りの位置とはなっておらず、若干の関節の遊びが残っています。

横足根関節は荷重位(歩行時)において重要な役割を担っています。踵接地(ヒールコンタクト)の瞬間、横足根関節には遊び(可動性)がある状態です。それにより衝撃吸収が行われます。逆に足趾離地(プッシュオフ)では関節が締まることで安定性が増します。5スタンスフェーズの初期において踵骨は外反位となり、前足はある程度の可動性を確保していますが、足趾離地では踵骨は内反位となり、前足の可動性は制限され安定性が増します(表1)。5これは、距舟関節と踵立方関節の運動軸が影響しています。つまり、踵骨が外反位の時、これら二つの関節は平行となり前足の可動性が増大し、6一方、踵骨が内反位の時(足趾離地)、横足根関節の運動軸は広がるため前足の可動性制限が起こります。立方骨と舟状骨の可動性が減少したとしても、踵骨外反位の時には前足の可動性は増大しています。5

表1 踵接地から立脚中期にかけて踵立方関節のロッキングが解除(緩みの位置)することにより衝撃吸収が行われ、足趾離地においてロッキングされることで安定性を確保します。
踵接地
(ヒールコンタクト)
立脚中期
(スタンスフェーズ)
足趾離地
(トーオフ)
立方骨 回内位 回外位 回内位
踵骨 内反位 外反位 内反位
踵立方関節 締りの位置 緩みの位置 締りの位置

踵接地から立脚中期にかけて、踵骨は内反位から外反位へと変位します。その後、踵離地にかけて重心が内方へと移るに従い、踵立方関節への負荷が増加していきます。このタイミングで関節の運動障害が好発します。踵離地から足趾離地にかけて立方骨では回内が生じますが、立方骨が回内位のとき踵立方関節は締りの位置となるためロッキングが起こります。その後、すぐに距舟関節も締りの位置となるので、これによって横足根関節が完全にロックされるため、後足と中足が一体となって動き始めます。これは、足趾離地における安定性にとって、またWindlassメカニズムが正常に機能するためにも重要なバイオメカニクスです。足趾離地では足部の強固な安定性が要求されるので、このタイミングで横足根関節が締りの位置にない場合、靭帯や腱などの軟部組織、さらに関節に大きな負荷を与えることになります。

扁平足の場合、足趾離地において立方骨の過剰回内が起こります。また足底腱膜による安定化が起こらないため踵骨の過剰外反、さらに立方骨の下制が起こります。立方骨の過剰回内と下制により、楔状骨と舟状骨の間で働いていたロッキングメカニズムが解除され、それに伴い前足の外反、中足骨の回外、1st Rayの下制と外転が起こります。また、この時脛骨は内旋位となるため、膝関節には内反の負荷が加わります。このような負の運動連鎖は仙腸関節や腰椎へも伝達されるため脊柱の弯曲に変位をもたらすこともあります。従って、立方骨のサブラクセーションが仙腸関節の痛みの原因になっているということも十分考えられるわけです。

長腓骨筋腱と立方骨

長腓骨筋は腓骨の近位1/3に起始を持ち、その腱は立方骨の外側から足底にかけて走行し、第5中足骨底と内側楔状骨に停止があります。(図3a, 3b)。7,8長腓骨筋は立脚中期(ミッドスタンス)から足趾離地(トーオフ)にかけ強い収縮が起こります。この時、長腓骨筋腱により立方骨は回内方向へ促されます(立方骨は長腓骨筋腱にとって滑車の役割を担っている)。4,9,10,11足趾離地において踵骨は内反位になっていますが、この時、長腓骨筋は前足の動的安定化構造として働いています。しかし、足趾離地において踵骨が外反位である場合、長腓骨筋は通常よりも強い短縮が起こるため、立方骨はより強く回内方向へ促されるようになります。従って、踵骨の外反が大きくなればなるほど長腓骨筋の収縮による影響が増大し、それに伴い踵立方関節の不安定性も増します。4

図3 長腓骨筋腱と立方骨の解剖学的関係

立方骨症候群

立方骨症候群は踵立方関節におけるサブラクセーションと定義されます。立方骨にサブラクセーションが生じることで関節包や靭帯、長腓骨筋腱などに負荷が加わります。4立方骨症候群は足関節の過剰回内障害や内反捻挫、オーバーユースなど様々な要因によって引き起こされますが、4,12-15特に足関節内反捻挫の最大40%のケースにおいて立方骨症候群が併発していると言われています。16傷害のメカニズムは、踵骨内反位における立方骨の急激な外反です。それにより、踵立方関節のアライメントに問題が生じます。4,14,15

足関節の内反捻挫では長腓骨筋腱が伸張されることで、前足には後外方への牽引力がかかり、立方骨には内下方(回内方向)への牽引力がかかります。そのため、立方骨は回内位にサブラクセーションが生じます。従って、この筋肉が立方骨症候群のメカニズムに重要な役割を果たしていると考えられます。4,14,15,17また長腓骨筋の機能低下は踵立方関節の安定性に影響を与えることがあります。18足関節に回内変位がある場合、長腓骨筋の収縮による影響が強まるため、立方骨症候群のリスクが高いと考えられます。4,19

立方骨症候群の症状は足関節捻挫と似ています。痛みは踵立方関節から第五立方中足関節にかけての足外側に広がり、関連痛が足指にまで広がっている場合もあります。4,12,14,20また、立方骨にサブラクセーションがある場合、立方骨の底側に軽度の腫れが触診されることもあります。21,14,15,19,22さらに、長腓骨筋腱、長腓骨筋腱溝、短趾伸筋の起始、立方骨の後外側や底側に圧痛が触診されます。4, 14, 22 足関節の自動的/他動的可動域は痛みのために制限され14, 15 、外反または内反への抵抗運動では痛みが誘発されます。12立方骨症候群の検査には、横足根関節の内転検査と回外検査の二つがあります。12内転検査では、一方の手で踵骨を固定し、もう一方の手で立方骨をつかみ他動的に内転させます(図4)。この時、踵立方関節の内側面が圧迫され外側面には牽引力が働きます。回外検査では、立方骨を他動的に内反、底屈させます(図5)。また、立方骨を他動的に上方または下方へ動かし可動性を検査することもできます。いずれの検査においても立方骨にフィクセーションがある場合、関節の可動性制限や動作痛が現れます。

図4 立方骨の内転検査
図5 立方骨の回外検査
参考文献
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