本の紹介 オステオパシックメディスン
待望の完全日本語訳出版
健康と身体機能向上を追求
米大学で高い評価「実践的な百科事典」
カイロジャーナル90号(2017.10.22発行)より
哲学、基礎医学に関する記述は全体の4分の1と少なめで、4分の3は、診断と治療、患者管理の方法についての記述であり、実践的である。しかしすべての項目でオステオパシー哲学をベースとした健康と身体機能向上を追求する姿勢が貫かねており、オステオパシー実践者の座右の書となるだろう。
最新哲学モデルの紹介
オステオパシー哲学の項目では「人間は動的な機能ユニットである」の原理に基づいた5つのモデル概念にが説明されている。
- バイオメカニクスモデル、
- 呼吸循環モデル、
- 神経学モデル、
- 代謝エネルギーモデル、
- 行動モデル
である。
これは2006年にWHOでも紹介され、認められたオステオパシー独自の患者アプローチ概念で、オステオパシーの診断と治療に広く応用されている。
哲学およびオステオパシー史の項目では、哲学思想の発展の歴史がバランスよく網羅的にまとめられている。コンパクトな記述ながら、現在日本で出版されている本の中では最も詳しいオステオパシー史が学べるだろう。スティルの伝記部分には、オステオパスなら何度も聞いたことも書かれているし、知らない側面にも触れることができるだろう。日本ではそれほど知られていない「スティルに次ぐ偉大なオステオパシー哲学者」のアーヴィン・コーの業績の紹介もある。
臨床に直結する解剖学
解剖学の項目は、解剖学を最大限に活用して臨床を実践するための基本概念が書かれている。
- ①発生学
- ②細胞解剖学
- ③動き
- ④連結構造
の4つの重要性を挙げ、それらの理解を深めることが臨床を合理的に進めることにつながるとしている。身体を個別の部位の集合体として学んだとしても、頭の中で完全な人間を再構築する能力を持ち、統一された身体を観察することがホリスティック医学の基本であると説く。
診断と治療は、体性要素へのアプローチの項目でまとめられ、部位別の評価方法には、検査法だけでなく機能障害の種類と診断方法が記されている。写真や表が多用され、詳しくまとめられている。また、筋膜リリースに関しては、リリースのメカニズム、頭蓋領域オステオパシーについては、一時呼吸メカニズムなど、アプローチの生理学的原理も説明されている。
オステオパシーのテクニックについては、伝統的アプローチと現代的アプローチに分けられ、ほぼすべてのオステオパシー大学で教えられている歴史の長いテクニックは伝統的アプローチ、一部大学で扱われている歴史の浅いテクニックは現代的アプローチとしてまとめられている。伝統的アプローチには、
- マッスルエナジー、
- 筋膜リリース、
- 頭蓋領域のオステオパシー、
- ストレイン・カウンターストレイン
などが含まれる。現代的アプローチは
- 靱帯張力バランスと靱帯性関節ストレイン
- ファシリテイティッド・ポジショナル・リリース
- 内臓マニピュレーション
など8項目が紹介されている。
本書の最後では、オステオパシー医学研究の将来について論考される。臨床研究のゴールドスタンダードが無作為プラセボ対照二重盲検試験である現在、オステオパシー研究はどのようにデザインされるべきかが考察され、答えは単純ではないが、今後のオステオパシーの方向性が明確に述べられている。
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