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  神経因性疼痛の基本的な仮定

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痛み学NOTE <第26回>神経因性疼痛の基本的な仮定2012.02.29

カイロジャーナル73号 (2012.2.29発行)より

神経因性疼痛の機序について、未だその詳細な真実は藪の中にあるようだ。私たちが知り得るものは、仮説とその証拠に過ぎない。ここでは定説的な概念を紹介しよう。神経因性疼痛を最初に発表したのは神経科医・ミッシェル(S.Weir.Mitchel・米国)だった。ミッシェル医師は、南北戦争時代にフィラデルフィアで病院を開いていた。そこで、南北戦争で負った末梢神経外傷の患者さんを、数百万人も診察治療している(1871)。その内の10%の患者さんは、外傷を負った神経分布領域に激しい灼熱痛を訴えていた。この時代に経験した症例から、基本的には2つの観察結果が私たちの神経因性疼痛の核心的な理解になっている。

1つ目は、末梢神経の部分的損傷は、完全損傷よりも痛みを起こす可能性がより高いということ。2つ目は、患者は鋭敏な過敏症をみせるということである。これらの痛みを起こした病変は、末梢神経の部分的な損傷が関与していたことが報告されている。

私たちが痛みの機序を考えるときに、仮定する経路はよく知られた痛み経路である。末梢の刺激に始まった痛覚刺激は、脊髄に入って反対側の脊髄視床路に渡り、視床に伝達されて皮質に広がる。

神経因性疼痛の基本的な仮定は「この経路に沿ったどこかの活動を増幅させる」あるいは「末梢の侵害受容器に極めて異常な活動がある」と仮定することである。この仮定は最も単純である。

もう1つは中枢神経系における下行性疼痛抑制系のルートである。何らかの抑制のポイントを阻むことによって、痛覚伝導ニューロンを抑制から解放することになる。当然、痛みの信号は発信され続ける。

また末梢神経、特に有髄線維が損傷されると、その線維に形質的変化を起こすことになる。すると通常は痛みを起こさないはずの有髄線維、例えば触神経そのものとリンクされて痛みを送信し続けることになる。C線維の小細胞にもノルアドレナリン受容体(α2受容体)が出来て、交感神経の影響を直接受けることにもなる。こうした神経の混戦状態が出来上がると、振動や触刺激の感覚が灼熱痛を引き起すことにもなりかねない事態になるのである。


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