《第23回》私たち一人ひとりが考えなければならないこと カイロプラクティックジャーナル

  《第23回》私たち一人ひとりが考えなければならないこと 

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岡井健DCのI Love Chiropractic ! 《第23回》私たち一人ひとりが考えなければならないこと 2012.11.04

覚悟して日々過ごす
カイロジャーナル75号(2012.11.4発行)より

ジャーナル読者の皆さん、いかがお過ごしですか? 日本は今、一年で最も過ごしやすい秋を楽しんでいるのではないでしょうか。私が暮らすアメリカでは大統領選挙のニュースで賑わっています。カイロプラクターとしては、やはり健康保険改革の公約のことが気になりますが、いずれにせよ、この国の健康保険システムは崩壊していくような気がします。やがて保険対象外となる日が来るかもしれません。そうなれば間違いなく保険頼みのカイロプラクターは次々と廃業していくでしょう。日本と同じ自由診療となった場合、どれほどのカイロプラクターが生き残るのでしょう。私はいつそのようなことが起こってもいいように、覚悟して日々過ごしていかなければならないと思っています。

カイロが保険の対象外となるような業界としての大きな危機が訪れれば、まとまりをなくしてしまったアメリカのカイロ業界も、初心に立ち返りカイロプラクティックのあるべき姿を再確認することができるかもしれません。人間というものは頭をガツンとハンマーでぶっ叩かれないと気がつけない生き物なのでしょう。誰しも良かれと思って一生懸命頑張っていたのに、時が経ち、ふと自分の軌跡を見返してみると、なんと見当違いな方向に向かって進んでいたのかと、愕然とすることがあるものです。そのようにカイロの業界も迷走を続けてきたのかもしれません。業界の発展とはそもそも何なのか、と考え直す時期に来ているのかもしれません。

日本のカイロ業界はと見回してみると、この迷走ぶりもなかなかのもではないでしょうか。日本であれアメリカであれ、大差はないのかもしれません。業界内の多くの方が一生懸命にそれぞれの信じる道をひた走っているわけですが、結果も思うように現れないし光も見えてこない状況でしょう。やがて落胆し、虚無感とともにわかり合える小さなグループ、または一人でできることをコツコツとやる方が、傷つくことなく幸せだと感じるようになるのでしょう。それはそうだろうなと私も正直思います。業界内では相手のことをよく知らないくせに、取りあえず悪口を言ったり敵意や偏見を持つ人が多過ぎるように思います。それどころか、自分が正しいと思うあまり他の人の妨害を企てる始末です。

ときには悪口を言われてもしょうがない人もいますが、大概の人は実際に話してみると実にいい人で、一生懸命にカイロプラクティックのことを考えていたりするものです。私などもきっと会ったことも話したこともない人から悪口を言われていることでしょう。このような困った人間の習性も利害が一致したときには驚くほど急速に姿を消します。人間の防衛本能とでもいうのでしょうか、敵対するものには牙を剥き利害が一致するものとは徒党を組むのです。これは本能的なものでもあるので悪いことばかりではありません。それならこの防衛本能を利用して業界がもう少し団結すればと思います。

カイロが好きだ、患者のためにできる限りの努力をして素晴らしいカイロを提供したい、カイロのことをもっと世の中の人に理解してもらい利用してほしい、カイロプラクターという仕事が社会的認知を受けることなど、日本のカイロプラクターの多くが考え望んでいる大きな構図の下に力を併せ、業界のスタンダードを上げる道を模索できないものかと願います。基準ができてしまうと、制約を受け自分の好きなようにビジネス展開ができないと思う方は、スタンダードが上がり効果が知られ安全性が高まれば、もっと多くの方がカイロプラクティックの治療を受けるようになるので、今よりもっと盛業するとは考えられないでしょうか。

教育レベルが低い悪質なカイロプラクターが、世の中に悪いイメージを与えているので排除したいと思う方は、いくら排除しようと思っても、知識、技術、倫理観のレベルが低いカイロプラクターは決して消えていなくならないことを認識しなければなりません。それならいっそ、彼らがもっとレベルの高いカイロプラクターになれるような道を考えてはどうでしょう。その方たちだって、自分たちが受け入れられレベルの高いカイロプラクターと成長していけば、プライドを持ち長年に渡りやりがいのある仕事をし、人々に感謝され恵まれた生活をすることが可能になるのです。

自分がやっているテクニックが一番だ、自分たちのカイロ哲学が本物で他のカイロプラクターが許せないと思う方は、世の中には一つのものがすべての人に最適で好まれる、ということは唯の一つも存在しないということを受け入れる度量が必要です。様々なテクニックが存在し、哲学にも幅が出てきているのは否定できない事実なのです。自分のポリシーや考えを曲げる必要はありませんが、他の考えを持った真面目なカイロプラクターを認め、力を併せることができなければいけません。

多くの優秀なカイロプラクターが集まれば、もっとカイロプラクティックが知られ、あなたが一番と思っているテクニックや哲学で、多くの人を救うことができます。また他のテクニックの方と交わり、彼らに影響を与えて自分が情熱を持っているテクニックや哲学を伝えていくことができるのです。そんな風に建設的に考えることはできないでしょうか。あなたが自分のテクニックにプライドを持つように、別のテクニックの方も自分のテクニックにプライドを持って一生懸命頑張っているのです。

業界なんかどうでもいい、自分は自分の道をコツコツと極めたいという方は、自分に与えられた使命を考え直してみてはどうでしょう。あなたには、思っているより、もっと大きな使命を与えられていると思います。狭い自分の世界の中でどれだけの成長があるのでしょう。世の中にはあなたが知らない、もっと素晴らしいことやすごい人がたくさんいます。そんな出会いから、あなたが学ぶものや得られる幸せに背を向けるのは実にもったいないことです。それに、あなたの助けを必要としている仲間もたくさんいると思います。自分だけが真摯に粛々と頑張っているといっても、やはり人とのつながりや社会の中で生かされているのです。

そしてカイロと出会えたのも先人が頑張って伝えてくれたからです。そのギフトを受け取ったのなら、それを次の人、次の世代に伝える使命があるのです。そのためには業界が少しでも良くなっていることは大切なことなのです。

近年の日本のカイロ業界は、バブルの時代から凋落し、長期景気低迷に落ち込む日本社会と一緒に元気がなくなっていると聞きます。どんな時代にも元気に頑張って成長している業界はありますが、カイロ業界では学校の生徒は激減し、廃業率は鰻登りと聞き及んでいます。そんな小さな元気がない業界内で反駁し合ったり、ネガティブ・キャンペーンをはったり、足の引っ張り合いをしたり、妨害したり、レベルの低い誹謗中傷をしている場合ではないと思います。また、業界の出来事は自分たちには関係ない、自分が一生懸命に目の前の患者のために頑張ってさえいればいい、という認識不足からも脱却するべきです。業界が元気で繁栄することは業界全体にメリットがあるのです。

正しく長く繁栄するためにはどうすべきか? 私たち一人ひとりが大きなビジョンを持って何をすべきなのかを考えるところから始めてみるべきだと思います。そのことに一人でも多くの方が気づいてくれることを願って、これからも微力ではありますが活動していきたいと思っています。今はまだまだですが、まずは自分自身が人の心を動かせる人間として成長していかなければとも思っています。そしてカイロプラクティック業界が、この少し暗くなってしまっている日本へ、明るい光を照らす業界へと発展して欲しいと心から願うのです。

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