Beyond Manipulation <第9回>過緊張筋へのアプローチ2013.10.25
カイロジャーナル78号 (2013.10.25発行)より
アプライド キネシオロジー(AK)などで使用されるマニュアルによる筋力テストは、筋を支配する神経機能を評価する方法として使用されている。この筋力テストには、いくつかの方法がある。それらのテストの中には、γ1筋力テストとγ2筋力テストというものがある。
γ1筋力テストは、検者誘発性筋力テストで筋紡錘の核袋線維の反応であり、γ2筋力テストは被検者誘発性筋力テストで核鎖線維の反応である。この2つの筋力テストの方法は、検者の押圧から開始するのか?(γ1筋力テスト)あるいは被検者の筋収縮から開始するのか?(γ2筋力テスト)ということで異なる。
臨床でどのように使い分けるのかということは、そのテストの方法から考えれば単純である。γ1筋力テストによる筋が伸長されることによる神経の反応は、身体の構造を重力に対して維持するための機能を評価している。一方、γ2筋力テストによる随意の筋収縮の神経の反応は、ボールを蹴るというような意識的に筋の収縮を起こすような運動の機能を評価している。
しかし、随意運動においても、重力に対して姿勢を保持しながら随意運動を行う場合には、すでにγ1筋力テストにより評価される機能を使用していることになる。このためγ1筋力テストは、筋の神経学的機能を評価する上でベースとなる最も重要な筋力テストである。
姿勢を維持するための筋の伸張反射が正常に起こらない場合、重力に対して身体を支える機能のある筋、抗重力筋(脊柱起立筋、胸鎖乳突筋、僧帽筋、腹筋、殿筋群、ハムストリング、下腿三頭筋など)においていは、γ1筋力テスト、伸張反射が正常に起こらない場合、網様体からの刺激がこの異常をカバーすることになる。この網様体には2つの部位、橋網様体核と延髄網様体核が関与する(図)。橋網様体核は抗重力筋を興奮させ,延髄網様体核はこれを抑制する。
延髄網様体核の抑制の低下は橋髄網様体核の抗重力筋の刺激(前角運度ニューロンの促進)の増加につながり、伸張反射の異常を小脳、前庭核などからの情報により補正するとともに、重力に対して姿勢を保つ。しかし、網様体による補正作用は、直接、前角運動ニューロンを興奮させるため、筋紡錘からの微調整の作用が低下しているため、過緊張傾向になる。
これでは、このような原因による過緊張筋への対処法は上位中枢によるコントロールを変化させるのではなく、根本的な問題、正常な伸張反射を回復するための検査と治療が必要になる。つまり、γ1筋力テストの異常を修正すればよいということになる。抗重力筋において、過緊張が検出される場合、γ1筋力テストによる異常とこれに対する治療が「過緊張筋(抗重力筋)の緊張度を下げる」ために必要なものである。γ1筋力テストの異常を起こす因子には、筋紡錘(浮腫、硬縮)、ゴルジ腱器官(短縮)、起始停止(伸長、微小剥離)、その他多くの因子がある。しかし、γ1筋力テストにより伸張反射を正確に評価できれば、その原因を突き止めることはさほど難しくない。