Kerry D’Ambrogio「身体をトータルにケアすること」カイロプラクティックジャーナル

  Kerry D’Ambrogio「身体をトータルにケアすること」

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Kerry D’Ambrogio「身体をトータルにケアすること」

  

昨年11月に来日し、統合的身体バランシング、筋エネルギーテクニックのセミナーを行い、今年も4月と10月にセミナーが決定したケリー・ダンブロジオ氏。フロリダのクリニックでの臨床と世界中を飛び回るセミナー講師という二足のワラジでいつもパワー全開です。徒手療法に目覚めた経緯や、現在のセミナー活動についてお聞きしました。

なお、私はちょっと英語が苦手なので、いつもダンブロジオ先生のセミナーで通訳をお願いしている櫻井京D.C.に今回も通訳をしていただきました。では、ダンブロジオ先生の治療家として教育者としての熱き思い、じっくりお読み下さい。

(2008年11月3日収録)

斎藤:ダンブロジオ先生は、ご自分のクリニックと様々なセミナーの開催で多忙を極めていますが、この世界に入るきっかけはなんだったんですか?

ケリー:私はカナダの生まれで、学生の頃からプロのフットボール選手になるのが夢で、大学に進みました。ところが、練習をしていた時に右膝を痛めてしまい、理学療法を受けたのです。治療の内容は、プールの中での歩行リハビリ、超音波、電気療法、マッサージ、などでした。これらの治療により、良くはなったのですが、また練習を始めると同じ問題が出てくるという状態でした。結局、私はフットボール選手になるのをあきらめ、理学療法士になることに決めたのです。トロント大学(カナダ・オンタリオ州)の理学療法学科に入りました。そこで私にとっての最初のメンター(恩師)であるダグ・フリアード先生に会いました。彼は、筋膜リリース、筋エネルギーテクニック、頭蓋仙骨療法について話してくれました。ただ症状を治療するのではなく、問題の核心に迫る治療法があるということを教えてくれたのです。

理学療法学校の1年目でこのような治療法があることを知り、この治療法を覚え、自分自身を治療し完全に治し、またフットボール選手に戻ろうと考えたのです。そして筋膜リリース、筋エネルギーテクニック、ポジショナル・リリース・セラピー、頭蓋仙骨療法などのセミナーを受講しました。そして覚えた治療を自分に施したことにより、自分の状態を完全によくすることができたのです。でも、フットボールへは復帰しませんでした。私の中では治療ということが、フットボールよりもずっと大きな興味になっていたのです。

斎藤:理学療法以外にはどのようなことを学びましたか?

ケリー:理学療法の学校を卒業し理学療法士になり、次にアスレチック・セラピストになりアスリートの治療も行いました。カナダから米国フロリダ州に移住し、そこで漢方薬と鍼の勉強のために、また4年間大学に行き、東洋医学のドクターを取得しました。なぜ東洋医学を勉強したかというと、徒手的療法には反応しづらい、別の問題を抱えている患者が多くいることを知ったからです。感情やエネルギーの問題、栄養の問題などです。その後、またカナダに戻って、オステオパシーの学校に4年間通い、オステオパシーの学位コースを終了しました。ですから私がバックグラウンドとして持っている資格は、アスレチック・セラピスト、理学療法士、オステオパス、漢方と鍼のドクターということになります。

斎藤:ずいぶんと熱心に勉強されたのですね。

ケリー:さらに、これらの勉強を続けながら、世界のいろいろな療法を150種類以上学びました。頭蓋仙骨治療、筋膜リリース、ポジショナル・リリース・セラピー、リンパ・ドレナージュなど、様々なテクニックです。数週間ごとに異なる資格を持つ治療者、オステオパス、カイロプラクター、理学療法士、ボディーワーカーなどと共に勉強することにより、それらの治療家がどのように療法を理解し使うのかを知りたかったからです。私が初めの理学療法の学校を修了したのが1988年のことです。今年が2009年なので、もう20年間以上勉強を続けて来たことになります。これからもさらに勉強は継続していくつもりです。

ケリーダンブロジオ

ケリーダンブロジオ

斎藤:現在、先生の教育活動はどんな状況なんでしょうか?

ケリー:現在はフロリダ州サラソタに自分の会社を持っており、国際的に教育活動の場を拡げています。カナダ、アメリカ、中南米、中国、日本、フィリピン、オーストラリア、ヨーロッパの国々、南アフリカなどで教えてきました。また、いくつかの協会でも教えていて、アプレジャー・インスティテュート、ダイアログ&コンテンポラリー・インスティテュート、インターナショナル・ボディートーク・アソシエーションなどから講師依頼を受けて行っています。

将来的には、バラル・インスティテュート(ジャン・ピエール・バラルD.O.による米国のオステオパシー学校)でオステオパシーを教える予定です。ここでは3年間かけて、オステオパシーの評価(診断)、治療を総合的に教え、修了試験により認定するプログラムを開発します。ここでもトータル・ボディ・バランシング(TBB)を教える予定です。TBBは全身の評価をし、同時に治療を行う方法で、治療には決まったテンプレートを使います。テンプレートに関節の治療が必要なら、筋エネルギーテクニック。筋スパズムを治療するならポジショナル・リリース・テクニック。膜や瘢痕組織の問題を治療するなら、筋膜リリース。内臓を包む膜を治療するなら内臓マニピュレーション。頭蓋、脊髄の膜を治療するなら頭蓋仙骨療法。浮腫を治療するならリンパ・パンピングとドレナージュ・テクニック。このように必要に応じてテンプレートに組み込むことができます。

また現在、徒手療法と併用して使うエクササイズ・テクニック。身体の問題に関連する感情の問題に対処するためのマインド・ボディー・セラピーも教えています。これらを適切に使っていくことにより、様々な問題を抱える患者に対し、的確に効果を上げることができると考えています。

ケリーダンブロジオ

ケリーダンブロジオ

斎藤:日本の受講者の印象はどうですか?

ケリー:私は日本で教えることをすごく楽しんでいますし、いつも楽しみにしています。昨年の11月で5度目の来日になりますが、受講者の皆さんはどなたもプロフェッショナルで、知識を持っていることがよく分かりますし、日本の受講者は尊敬を持って私に接してくれます。私は世界中を回っていて、そういう印象を特に日本で強く持ちます。私が講義しているときは、熱心にノートを取っていますし、私の話にも非常に注意深く、何が話されているのかを聞いてくれます。他の国では、私がまだ話している最中に手を挙げ、話をさえぎりながら質問してくることがあります。日本の方は、最後まで話を聞いて、実技の時も順番通りに行ってみて、それでも分からない場合に、私に質問してきます。質問はワークショップの最中もあれば、休み時間の時もあります。本当に真剣に取り組んでいるのが感じられます。学びたい気持ちが強く伝わって来ますし、多くのよい質問もしてもらえます。また、実技も一生懸命取り組んで、上手に身体をコントロールして行っていると思います。私が英語で話し、通訳を通して教えているということを考えても、非常によくセミナーが進められたといつも感じています。

斎藤:ダンブロジオ先生は多くのセミナープログラムを開発されていますが、6回目になる今年は、どのようなセミナーを日本の受講者に提供していただけますか?

ケリー:最も大切なのは統合的身体バランシング(TBB)の考え方と実践の方法の習得だということを最近特に感じます。このテクニックには全身の治療が含まれていますが、最も重要な要素はテンプレートに含まれていますので、重要な治療を見落とすことなく行えます。TBBをしっかりと理解し使えるようになれば、どのように評価し、どのように治療するかということが理解できるはずです。他のテクニックをTBBの中に取り込んでいくことがとても簡単にできるようになります。

日本ではポジショナル・リリース・セラピー(PRT)を数回教え、筋エネルギーテクニック(MET)は部位ごとに教えてきました。昨年の11月にTBBのレベル1を行いました。今年は、前回の参加者に、さらにTBBレベル2を行って、TBBを終了したいと考えています。また次の機会にTBB レベル1・2を行って、さらに多くの方にTBBを受講していただければと思っています。

METに関しては、今まで4時間で1部位として、骨盤、仙骨、胸椎をやってきました。3日間を通して、上半身、下半身に分けて行ったら、もっと習得し易いかとも計画しています。カイロプラクターにとって、筋エネルギーテクニックはとても大切なテクニックのひとつになると思います。METには関節の可動域減少、関節のバイオメカニカルな問題の評価方法も含まれていますから。また、骨粗鬆症や骨減少を起こしていてマニピュレーションを使えない患者には、METにより脊椎やその他の関節を治療することができます。また、マニピュレーションの準備としてMETを用いれば、靱帯や筋肉を柔らかくすることができ、患者に優しい治療になります。

斎藤:先生のセミナーで重要となるポイントは?

ケリー:私はいつも評価する方法を学ぶことが最も大切だと思っています。ですから、筋スパズムを扱うPRTでも、関節を扱うMETでも評価方法を重視したセミナー構成になっています。また、評価の要素として非常に大切なこととして膜があげられます。これは内臓の膜と、脳、脊髄の硬膜、筋膜が含まれます。今年の10月、11月のセミナーでは、第1回となる膜リリースを予定しています。

斎藤:他に大切なことは?

ケリー:例えば、浮腫があるのかないのか。それをどのように排出させるのかを評価できることも重要です。肩に急性の外傷があり、腫脹があるのなら、リンパ・ドレナージュ、パンピングを使って排出させます。頸部、腰部でも必要なテクニックですし、頭部に使用するケースも多くあります。

また、徒手療法を補強するために、ホームエクササイズの必要性を選択することも治療効果を上げます。もし、問題が筋肉の弱化が原因ならば、それを治すことが効果的な治療です。腹筋が弱く正しい姿勢を保てないのなら、徒手療法とともに、腹筋を強くする運動をする必要があります。筋肉を鍛えること、柔軟性をつけることなどでコンディショニングをよくしていくことができます。

治療には、いくつものアプローチがあって、一つ一つが大切な要素です。何が原因かを見極めてそれに対するアプローチをすること、身体全体を念頭に置いて診断治療をするということを、全部のプログラムを通して強調しています。

斎藤:最後に、日本でのプライベートな時間は何をされているのですか?

ケリー:セミナー以外のプライベートな時間はほとんどありません。セミナーが夜の7時半頃に終わってから、夕食をとって10時か11時には寝てしまいます。日本にセミナーで来ている時は大体このような毎日です。でもカナダの友達が英語教師として東京にいるので、時間ができたら連絡をとって東京を案内してもらっています。昨年の11月には、セミナー終了後に一日、お台場に連れて行ってもらいました。モノレール(ゆりかもめ)からの夜景がとてもきれいでした。東京で食べたハワイアン・ハンバーグもすごくおいしかったです。以前には、富士山や京都観光もしました。日本の伝統的なものが好きです。今度4月に行った時には、まだ行ったことのない日本的な街やものを見たり体験したりしたいと思っています。どなたか、お勧めのスポットがありましたら教えてください。

斎藤:今年は、ダンブロジオ先生には、4月に3日間と10月、11月に4日間の2回のセミナー(終了)をお願いしてあります。それぞれのセミナーともに、充実した内容となっています。なかなか自由な時間は取れないと思いますが、日本がもっとも美しくなる季節、ぜひ満喫してください。今日は長い時間ありがとうございました。また、4月にお会いいたしましょう。

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