痛み学NOTE <第40回>遅発性筋痛のメカニズム2014.04.28
カイロジャーナル79号 (2014.2.22発行)より
われわれが臨床で経験する関連痛の多くは、さらに遅発の時間が長いように思える。そうなると、神経学的な仮説とは違う機序を考える必要がありそうだ。典型的な遅発性筋痛については、筋線維の傷害に関する説がある。
筋の収縮は3つのタイプがある。等尺性収縮、短縮性収縮、伸張性収縮の3タイプである。遅れて出る筋痛は、等尺性に収縮した筋肉が伸張性収縮されたときに現れやすい。例えば、階段を下りる、下り坂を駆ける、登山など下りの動作では、大腿四頭筋や下腿三頭筋は筋長を長くして力を発揮することになる。
そうなると運動の3~4日目に、筋肉組織から逸脱酵素のクレアチンキナーゼ(CPK)や、筋線維に酸素を蓄えるミオグロビンの血中濃度がピークになり、筋の傷害や炎症に働きかけることになる。これが遅発性筋痛の原因となる。
また、筋線維3種の中でもFG線維は最も太い線維である。このFG線維は白身で無酸素性にATPがエネルギーを作り、速い収縮を行う。あるいは解糖系酵素活性を行うのでグリコーゲンが多く、ミオグロビンは少ない。
FG線維は、伸張性収縮で損傷しやすい筋線維でもある。この線維は約10分位の活動で疲労する。ATPが少ないので元の状態に戻りにくく、筋が硬くなりやすい。他の2種類の線維が活動し続けると、FG線維はその動きに引っ張られて損傷しやすい状態となる。そこで一旦損傷すると、遅発性に筋痛が起こるというわけである。