いい姿勢でいこう 第11回 姿勢から考える椎間板ヘルニアについて2015.08.11
第11回 姿勢から考える椎間板ヘルニアについて
カイロジャーナル71号(2011.6.26発行)より
今回は悪い姿勢によって引き起こされる椎間板ヘルニアについて解説します。今や東京都だけで年間1000人以上の人が椎間板ヘルニアの手術を受けているそうです。
椎間板ヘルニアの原因がすべて姿勢にあるとは言いませんが、今回の内容を読んでいただくと、下を向きっぱなしにしない、腰を丸め続けたまま座り続けない、ということがどれほど重要かご理解いただけると思います。
私がこのような意見を持つに至った背景は、椎間板ヘルニアになる方の多くが姿勢に問題があったからです。特に頚椎でヘルニアを起こした人は長年にわたり下を向いていることが多く、腰椎でヘルニアを起こした方は同じく長年にわたり腰を丸めて座っている方でした。さらに、現代社会においては子供の頃からポータブルゲームや携帯メールなど、ますます下を向く機会が増え、仕事ではパソコンに向かって長時間座る姿勢を余儀なくされている状況です。今後、椎間板ヘルニアの症状に苦しむ方たちを減らすには姿勢指導が必須であると確信しています。
ご存知のように、椎間板ヘルニアが起きやすいのが頚椎と腰椎です。脊柱を横から見た際、共にゆるやかに前弯しているべき部分です(写真1)。
椎間板が飛び出すメカニズムですが、最近私は枝豆を例えにして説明しています。枝豆が潰された対して逆方向に飛び出そうとする現象です。
椎体と椎間板の関係でいうと、前弯時には後方が潰される形になるので、椎間板内の髄核は前方に飛び出ようとします(イラスト1)。ところが背骨の前側を保護する前縦靱帯はとても強いので、椎間板が靭帯を突き破って前方に飛び出す(ヘルニアを起こす)ことは稀です。枝豆が飛び出そうとする方向の鞘が頑丈なため飛び出せない感じです。
ところが、下を向く姿勢や腰を丸めて座る姿勢は、頚椎と腰椎の前弯のカーブを後弯にしてしまいます(写真2,3)。問題は、後縦靱帯が比較的弱いことです。このため、後ろの靭帯に負荷をかけ続けることで、椎間板が後縦靭帯を突き破って飛び出してしまうのです(イラスト2)。
以上のように「下を向く姿勢」は頚椎で、「腰を丸めて座る座り方」は腰椎で、椎間板ヘルニアを引き起こしやすい状態をつくってしまうのですが、私たちはデスクワークや家事など、手元の作業をする際に下を向かなければなりません。さらに座る姿勢はどうしても腰を丸めてしまいがちです。そこで、下を向く必要がないときにはしっかり背中を伸ばし、腰は前弯をを意識することが大切です。
最後に本紙68号で紹介した「座り方のコツ」でも触れましたが、重要なことなので簡単に説明いたします。イスにかけるときは、前かがみになってお尻が背もたれに当たるまで深く座り上体を起こします。床に腰を下ろすときは、壁、ベッドやソファーの縁など「寄りかかれるもの」を探して、イス同様深く座り上体を起こします。そうすることで骨盤が立つ(傾かない)ので、腰椎の前弯が保てるようになるのです。
私も含め椎間板ヘルニアにならないための姿勢を心がけていきたいものです。
- 碓田 拓磨D.C.(うすだ たくま)
- 1967年 長野県生まれ
1992年3月 早稲田大学社会科学部卒業
1992年4月 (株)リクルート入社
2001年3月 米国アイオワ州パーマーカイロプラクティック大学卒業
2002年2月 虎ノ門カイロプラクティック院開業
2005年4月 早稲田大学オープンカレッジ「姿勢と健康」講師
2010年 一般社団法人日本姿勢教育協会理事
「健康な人はなぜ姿勢がいいのか」(主婦の友社)
「即効1分間キャットレッチ 肩こり・腰痛 こんなにラクになるなんて(青春出版)
テレビ出演
となりの子育て(NHK教育)
世界一受けたい授業(日本テレビ)
ホンマでっか!?TV(フジテレビ)
あさイチ(NHK)
はなまるマーケット(TBSテレビ)
首都圏ネットワーク(NHK)
あげるテレビ(フジテレビ)