痛み学NOTE <第30回>血流が不足するとなぜ痛むのか?2012.07.28
カイロジャーナル74号 (2012.6.26発行)より
筋活動のエネルギーはATP(アデノシン三リン酸)である。よく自動車のエネルギーであるガソリンに例えられる。ヒトでは、このガソリンに相当するエネルギーがATPということになる。
ところで、このATPの基質はなにかというとグルコース(ブドウ糖)や脂質であるが、骨格筋のエネルギーの貯蔵原資としてはクレアチンリン酸(CP)である。ここからATPを産出することになる。
しかしながら、閉塞性動脈硬化症やバージャー病のように血流の絶対量が不足すると、筋エネルギーの原資であるクレアチンリン酸(CP)が枯渇する。さらには、エネルギー源そのもののATPが不足することになるようだ。
そうなると、細胞内にはアデノシンという物質が蓄積される。血管を拡張させようと、アデノシンが修飾作用として働くのだろう。アデノシンは神経系に多く存在する物質でDNAやATPの材料となる神経の修飾性物質とされている。どうも、このアデノシンが血管を拡張させようと働くようであるが、細胞外に遊離されて発痛物質としても作用する。それでも、アデノシンなどが発痛の起因となる濃度に達していなければ、直接に痛覚線維を興奮させるわけではない。
少なくとも痛覚線維を過敏状態に置いているわけで、このような状況下では筋収縮に反応して痛覚線維が興奮するということになる。したがって、「駆血帯疼痛試験」の結果にみるように運動に伴って痛みが起こるのである。