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痛み学NOTE <第35回>痛みの臨床的指標2013.06.27

ジャーナル77号(2013年6月27日発行)より


様々なデルマトーム
図1 様々なデルマトーム

図1はデルマトーム(dermatome:皮膚節)として発表された主なものである。こうして見ると、デルマトームは必ずしも同じものが採用されているわけではないことがわかる。デルマトームとは求心性感覚神経の皮膚支配領域のことであるが、脊髄が形態的に分節構造を持っているわけではない。したがって皮膚節の境界も曖昧なわけで、あくまでも機能的な分節が31対の脊髄神経支配で区分けされている。

当然のごとく、その境界に定説はない。極めて不確定である。デルマトームに対して、遠心性の運動神経支配領域は筋分節(ミオトーム)と呼ばれている。

デルマトームの様々な図をみると、あくまでも臨床上の印象としてではあるがkeegan & Garrettの図がより合致しているように思える。デルマトームは、脊髄疾患がどの分節レベルにあるのか判断する上で有用である。しかし、末梢に放散する痛みをデルマトームに照合しても、ピタリ合致するケースには先ずお目にかかれない。

内臓疾患では、その病巣部上の体壁において筋・筋膜の緊張あるいは皮膚の変化が見られるとされている。つまり内臓疾患の関連痛はデルマトームに出現することが多いということであるが、筋肉からの関連痛はデルマトームに出現するわけではない。

臨床で有用性が高いのは、トリガーポイント(Trigger Point=TrP)パターンの図である。TrPによって誘発される関連痛を示したもので、その専門の成書にも掲載されている。またインターネット検索でも入手できる。このTrPパターンの図は、関連痛の発信源を探る参考としてベッドサイドでも便利に利用できる。それでも、こうした関連痛は必ずしもマニュアルと合致しないことがあり、関連痛のメカニズムは未だ全容が明らかではない。

そもそもTrPとは何か。侵害受容器が発痛物質によって感作され過敏状態になった病態で、その過敏点が引き金となって様々な痛みや関連痛を引き起こすポイントである。要するに、筋・筋膜由来の侵害受容性疼痛をもたらす痛み信号の発信源になっている。この関連する痛みは筋筋膜性疼痛症候群(Myofascial Pain Syndrome:MPS)として知られているが、通常は医科の診断名として使われることはない。そもそもMPSという診断名自体が存在しないのだろう。存在しないわけだから、MPSの病態は他の疾患名として診断されているのが実情のようだ。
例えば、椎間板ヘルニアによる頸部および腰部の神経根症、脊柱管狭窄症、変形性関節症などとされる痛み症状などはその典型であろう。そこには、適切な治療が行われることがないという実態も隠れているに違いない。

不幸なことに、MPSの病態は原因不明とされやすい。あるいは異常がないとされる。または詐病や心因性、神経症と扱われやすい。こうした患者さんが慢性痛になり、痛みの難民患者となっている実情も見過ごせない問題なのである。

また、骨膜痛点パターンも見逃せない病態で、運動機能障害の患者さんにはよく診られる。TrPパターンと同様に骨膜痛点パターンも押さえて置くと便利に使える。例えば、剣状突起や恥骨結合上縁の骨膜痛点は腹直筋の緊張に関わるし、大転子の骨膜痛点は股関節疾患や外転筋の緊張をもたらす。また、T5、6棘突起の骨膜痛点は下頸部疾患や胸腰部疾患に関与することがあり、脊柱傍深筋の緊張はL5棘突起の骨膜痛点の影響を受けやすい。こうした骨膜痛点の反射変化は30項目ほどある。それでも、例として挙げた関連性からもわかるように、多くは解剖学的位置関係からその関連性を想定しやすいものが多いようである。


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